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ー希望ー66

 雄介は目を覚ますと、いつものようにキッチンへ向かい、朝食を作り始める。 「今日は目玉焼きにするかなぁ?」  そう独り言をつぶやきながら、スーツに着替え、料理の準備を整える。  すると、三十分も経たないうちに望が階段を下りてくる気配がし、雄介はその音に気づき、振り返る。 「体調、大丈夫か?」 「ああ、何とか。昨日は早退しちまったけど、今日は仕事に出なきゃな」 「そうか、無理すんなよ」  望がテーブルに向かうと、雄介は作り終えた朝食を並べる。 「そうだ、そうだ!坂本の病気、分かったで!」 「そっか、良かったな」 「うん。昨日、寝てからパソコンで調べてたんだけど、『咳喘息』ってやつにぴったりかなと思うんだ」  望は少し笑う。 「よく調べたな。普通の医者でも、咳喘息を診断するのは結構難しいんだぞ」 「ってことは、ビンゴか?」 「まあ、そうだな。あとは坂本さんにそのことを伝えて、薬を渡して、悪化しないように気をつければ、退院できるかもしれない。でも、通院は続けないといけないな」 「了解。それじゃ、今日は俺が坂本に伝えに行くわ」 「うん、お願い」  二人は朝食を終えると、病院に向かって車を走らせる。病院に到着すると、先に着いていた和也の姿がソファに座っているのが目に入る。 「お前が先に来てるなんて珍しいな」 「昨日、裕実が夜勤だったから、ちょっと暇でな。先に来て裕実と話してたんだ」 「なるほどな、裕実が夜勤か。じゃあ、今日のシフトはどうするんだ?」 「今日は昼からのシフトだよ」  二人は和也に軽く挨拶をし、ロッカールームへと向かう。望は普段、和也と一緒にロッカールームに入ることはないが、雄介とは一緒に入るので、自然に彼の後ろをついていく。 「さて、仕事しようか。和也、雄介と一緒に坂本さんのところ行ってくれないか? 雄介が坂本さんの病気を突き止めたんだ」 「分かった! 望は行かないの?」 「大丈夫だよ、朝確認したから」  雄介と和也は坂本のカルテを持って、病室へと向かうのだった。

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