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ー希望ー71
雄介はシートベルトを外すと、まず患者の状態を確認した。無事であることを確認すると、胸を撫で下ろす。
その直後、今度は裕実の様子を確認しに向かった。確かに裕実は息をしているものの、墜落の衝撃で頭部を殴打しているらしく、頭から血が流れている。
雄介は裕実の体を軽く揺らし、意識を呼び戻そうとする。すると、奇跡的に裕実が目を覚ました。
「ゆ、雄介さ……ん?」
「とりあえず意識があるなら良かったわぁ」
「どうしたんですか? 確か、僕たちはヘリコプターに乗っていて……」
裕実が体を起こそうとするが、頭の痛みのせいか表情を歪めた。
「痛っ!」
「裕実、無理せんときや。大人しくしとった方がええよ。頭から血も出てるしな……応急処置はしておくけど」
雄介はそう言うと、手早く裕実の頭に包帯を巻いた。
「どうやら、ヘリコプターも墜ちてしもうたみたいやな……」
裕実は痛みに耐えながらも状況を理解しようとしているようだった。
「そうみたいですね……ところで、患者さんは大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫や。ベッドも体も固定されてたしな。問題は俺たちがどうするかやな……」
雄介は横になったヘリコプターのドアを上に押し上げ、外の様子を確認する。上に登り、辺りを見渡すと、墜落現場は山の中腹。さらに飛行機の墜落現場からも大きく離れている。救助を呼びに行くには厳しい状況だった。
「ここは山の中腹あたりって感じやな。助けを呼びに行くより、俺が患者さんを病院まで運んだ方が早そうやな……」
そうつぶやきながら、雄介は再びヘリコプター内に戻る。
「状況を整理すると、どうやら救助を呼ぶのは無理みたいや。患者さんを背負って病院に向かうしかないな。それに……操縦士が言ってたけど、無線機も今の衝撃で壊れてもうたらしいし」
「それなら、雄介さんが患者さんを病院に運んだ方が良さそうですね……お願い……っ」
裕実はそう言いかけたが、再び頭の痛みが襲ったのか、顔を歪めて言葉を止めた。
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