1925 / 2058

ー希望ー72

「裕実、大丈夫かぁ!?」 「だ、大丈夫ですよ……。と、とりあえず、雄介さんは患者さんと一緒に下山してください!」  そうは言うものの、裕実の顔色は次第に悪くなっているように見える。  雄介はそんな裕実を心配そうに見つめた。いや、それは心配以上に、医者として彼の状態を冷静に判断しようとしている表情だった。 「大丈夫ってな……。とりあえず、お前の方も応急処置しかしてないんやで。場合によっちゃ、患者さんよりお前を優先して――痛っ……」  それまで冷静に話していた雄介が、不意に顔をしかめた。外傷は見当たらないが、どうやらどこかを痛めているようだった。 「雄介さんだって、人のこと言えないじゃないですかっ!」 「俺は大丈夫やって……多分、ただの打撲程度やろ。多少痛いだけやしな……」 「打撲程度ならいいんですが……もし頭の中で出血してたらどうするんですか!」 「アホか……そんなこと言うてる場合か? 今は動ける俺がどうにかせなアカンやろ!」 「確かに、そうですけど!」  裕実が反論するも、雄介は動じることなく話を続けた。 「誰かが動かなきゃ助けも呼べんやろ。とりあえず、お前を先に連れて行くで!」  そう言うと、雄介は立ち上がり、裕実を抱き上げる準備をするため、首や腕を軽くほぐし始めた。 「雄介さん! 僕なんかより、先に患者さんを優先してください!」 「何言うてんねん!友達やからとかそんな理由やない!お前の方が重傷やと思うたから、先に下山させる言うてるんや!」 「そうかもしれませんが……僕たちがいない状況で、もし患者さんが急変してしまったらどうするんですか? 確かに望さんは重傷の患者を運んでいるのかもしれませんが……」  裕実の言葉に雄介は思わず眉をひそめ、考え込んだ。  確かに裕実の言う通りだった。患者は足を骨折した程度の怪我に見えるが、もしも頭や内臓にダメージがあれば、一刻も早く病院で処置をしなければ命に関わる。  しかし、目の前の裕実は明らかに頭を打って外傷があり、出血もしている。

ともだちにシェアしよう!