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ー希望ー77

 雄介は一旦病院内に入ると、患者を颯斗たちに託し、事故の状況報告をするため、そして電話を借りるために院長がいる部屋へと向かった。  ドアをノックし、院長室へ入った雄介は、院長に向かって頭を下げると話し始めた。 「現場では救助された方は数名ですが、他の方はほぼ絶望的な状況です。吉良先生は現場で未だに応急処置を行っていますが、私はドクターヘリを使い最後の患者を搬送中に、ヘリが墜落してしまいました。墜落現場から私は患者を背負い、下山した後に救急車を呼び、ここまで来ました。しかし、ヘリには怪我をした本宮さんが残っています。そのことを早く吉良先生にお伝えいただきたいのです。私がいつも使っている携帯はヘリ墜落の衝撃で壊れてしまいました」  裕二は雄介の言葉を聞いて一瞬考え込むような様子を見せたが、すぐに口を開いた。 「雄介君……」  そう言って、裕二は自分の携帯を雄介に手渡した。 「とりあえず、院内で使っている電話だけど、新しい携帯ができるまでこれを使ってくれないかな?今はそれで望と連絡を取るといいよ」 「ありがとうございます」  雄介は再び裕二に頭を下げ、その携帯を使って望に電話をかけた。  数回コールが鳴った後、望が電話に出たが、その第一声は裕二からの電話だと勘違いしたのか、気だるそうな声だった。 「なんだよ!こっちは忙しいんだから、報告は後でするからよ!」  その言葉に、雄介は一瞬目を見開き、驚いて電話から耳を離したが、すぐに言葉を返した。 「ちょ、ちょー、話聞いてくれへんか?」 「……ん? へ? その声は雄介か?」 「あ、まぁ……そうなんやけど。とりあえずな、色々あってヘリコプターが墜落してもうてん。そいで、そのヘリの中に頭から血を流すような怪我をした裕実が居るから、早く行ってくれへんかなぁ? って思うたんやけどな」 「大丈夫だ……俺たちは今、そのヘリに居るからさ。正確にはもうそのヘリから離れて、裕実も頂上の広場まで連れて来たところだよ。あんな大きな音がしたら気付かない訳がないだろ?だから、レスキュー隊員たちと音がした方に行ってみたら、ヘリが墜落してるのを見つけた訳さ。裕実に事情を聞いたら、雄介が病院に向かって患者を下山させたっていうのも聞いたしな」

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