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ー希望ー87
「ところで、美里さんの病室に居た男性は?」
「ん? あの男性か? 俺の親父だけど……」
「だからか、だから空気が違ったっていうか……重たいっていうのか、そんな感じだったのか……」
「まぁ、そういうことやんな……俺だってまさか親父が居てたなんて知らんかったしな」
「でも、逆に言えばいいきっかけなんじゃねぇのか? やっぱり、自分の親には雄介の口からきっちりと、雄介が医者になったことを言った方がいいしよ」
「せやな……やっぱり、きちんと言うておいた方がええよな」
雄介は一息吐くと、目の色を変え、
「ほな、望は部屋に戻って仕事でもしとって……俺はちゃんと親父に話してくるし」
「ああ。確かに、俺があの場に居ても邪魔なだけだもんな……そうしとくよ。とりあえず、俺は美里さんを担当することになったから、美里さんには後で会って話するしよ」
「せやな。ほな、後でな……」
「ああ」
二人はそこで別れると、雄介は琉斗のために薬を取りに行き、再び美里の病室へと向かうのだ。
雄介は薬を琉斗に渡し、それを飲ませた後、父親のことを真剣な瞳で見つめると、
「親父……話があるから、中庭に行こうや……」
その雄介の言葉に、父親は雄介の後に付いて行く。
そして雄介は中庭に出るとベンチへと腰を下ろし、
「とりあえず、俺は消防隊員を辞めて、今はここで医者として働いとる。確かに、俺は親父に言われた通りに消防士にもなったし、レスキュー隊員にもなったんやけど、何か違う! って感じがして、医者の道を選んだ訳なんやけどな。医者の道を選んだのは、やっぱり自分の人生なんやから、自分が好きなことをしていった方がええんやないかなぁ? って思ったからなんや……確かに消防士やレスキュー隊員は嫌いではなかったんやけど、やっぱり弱い部分を言えば、自分の命が惜しくなってきたっていうんかな? 日々、死の恐怖を味わいながら生きていくのは流石に嫌やったからな。その点、医者は命の危機は感じへんし、人を助ける仕事。その点は消防士と変わらへんしな」
雄介は、真剣に医者になった思いを父親を説得できそうな言葉で繋げる。
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