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ー希望ー88
雄介の父親は雄介のその言葉に一息吐き、
「確かにお前の言う通り、消防士という仕事は死の恐怖を感じながら生きなければならない。それなら、お前の言う通り、医者の方がいいのかもしれないな。雄介は今の仕事に誇りを持ってるのか?」
「もちろんや! 寧ろ、自分で選んだ道やし、辞めようと思うたことはないしな! なんやろ? 消防士時代よりも生き生きできるって感じするし……」
雄介はやっと父親に笑顔を向ける。
「雄介が決めた道なら、最後までやり遂げるといい。私はもう何も言わないよ……いや、寧ろ、最初っから何も言う気はなかったんだけどね。ただ、雄介が私に就職のことをちゃんと話してくれなかったから。昔っからお前はそういうことを言わない子だったからね。優しすぎるのか、親には口答えするような子ではなかったし、親の言うことだけを聞いて育ってしまったから、自分の道を見失っていたのかもしれないからね。これからは、自分の信じた道を進みなさい。大変かもしれないけど、必ず希望の光が差し込んでくれるから」
雄介はもう一度、父親に笑顔を見せると、大きく頭を頷かせる。
「でも、気が変わったなら、もう一度、消防士としての席を空けておいてあげるけど……」
「いや! もう、ええ年やし、体力的に付いていけんようになるしな。せやったら、医者の方が長く仕事できるし、それも思ったことやしな……」
「お前は考えてなさそうで、そういう事考えていたんだな。お母さんには私の口から言っておくよ」
「いや……ええよ。俺から言うし。オカン、姉貴たちがあないなことになったから東京に来るんやろ?」
「どうだろうなぁ? まだ、お母さんには美里や琉斗が入院したとか言ってないからね」
「せやけど、あの飛行機事故はでかかったし、今朝のニュースで飛行機に乗っていた搭乗者の名前も言っておったようやし、オカンのことやから、すっ飛んで来るんと違ゃうん? せやから、そん時にでも話すよ」
「ま、確かに雄介の言う通りだな。お母さん、すっ飛んで来ると思うわぁ」
「ほな、親父、そろそろ行こうか? 俺も仕事に戻らなぁアカンしな」
「ああ……」
雄介の父親はベンチから立ち上がると、美里の病室へと向かい、雄介は自分の部屋へと向かうのだ。
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