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ー希望ー89

 午前中の診療を終えると、午後からは回診で小児科病棟を回る。  今は裕実が入院しているため、雄介は他の看護師と回っていた。  午後の仕事を終えると、望と和也と一緒に裕実がいる病室へと向かうのだ。 「ホンマ、裕実も無事やったみたいで良かったわぁ」 「だから、あの時、僕は『大丈夫です』って言ったじゃないですか」 「まぁ、そやけどな」 「雄介さんこそ大丈夫だったんですか?」 「ん……まぁ、俺の方は大したことはなかったから良かったんやけどな」 「大したことはなかったんだけど……? その後、何か意味がありそうですよね?」 「あっ! やっぱ流石やなぁ。ん、まぁ……俺やなくて姉貴と琉斗がな……あの飛行機に乗っておったんやって。あんなに人が亡くなってる中で助かったのは嬉しいねんけど、複雑やな……。まぁ、姉貴の方は何でその飛行機に乗っていたかと言うと、オカンのとこに行く途中やったんやって……」 「琉斗君たちが乗ってたんですか!?」 「俺もその話、聞いてなかったぞ」  そこに和也も口を挟んでくる。 「まぁ、望からそういうことは話さないやろうし、今まで和也、仕事しておった訳やしな。それで、朝、姉貴の病室に行ったら親父が来てて……そこで、俺は親父に医者になったことを話したんやけどな。そしたら、親父は『反対する気はない』って言っておった。これで、俺的にはスッキリしたって感じやな」 「お前はちゃんと親に話したって事なんだな。なら、もう何も気にせずに仕事に打ち込むことができるって事になるんだよな!」 「確かにそういうこっちゃな! 明日からはホンマにちゃんと気合い入れて頑張んで! いや……寧ろ今までも真面目にやっとったけど……更にって意味やで!」 「分かってるって! 今までのお前を見てれば分かるさぁ。だけど、何でお前は小児科を選んだんだ?」 「あ、あー、それは、昨日、裕実には言うたんやけど望には言うておらんかったんやっけな?」  雄介はそう言うと、小児科を選んだ理由を話し始めるのだ。  望は雄介から話を聞くと、一息吐き、 「そういうことか……」 「雄介って、考えてなさそうで色々と考えているって事だったんだな」  話を聞いていた和也も話に割り込んでくる。 「考えておるっていうか……診療所で働くようになったら、望一人で全部の科をカバーするのは大変やろうって思った訳やし、望は基本、子供が苦手やろ? せやから、小児科がベストかなぁ? って思って選んだって事や」

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