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ー信頼ー7

「そういうもんなんだな」 「まぁ、そういうもんなんやで」  雄介は突然、望の方に向かってにっこり笑い、 「ほな、俺は遊んで来るなっ!」  と言うと、診療所の方に向かって走り出した。  望はその雄介の笑顔に少し期待していたが、雄介がまさかそんな行動を取るとは思っていなかったようで、ため息をついてしまう。 「ちょっと、待てよ、雄介!」と思いつつ、仕方なく望は雄介の後を追うことにした。  やがて、望が診療所に向かうと、雄介が海パン姿で診療所から出てきた。そしてその後に、和也も海パン姿で現れた。望はその二人を見て、思わず手で顔を覆う。 「ほな、俺達の方は海に行って来るなぁ!」 「俺達って、和也もなのかよー!」 「うん! まぁ、ちょっと海で遊んでみたかったし、行ってくるなー! あ、でも、診療所に患者さんが来たら望と裕実でよろしくな!」 「って、おい!」  望は呆れたようにため息をつきながらも、診療所の方へ足を向ける。  一方、裕実は相変わらず真面目な性格で、白衣に着替えて診療所に待機していた。 「相変わらず、裕実は真面目なんだよな」  望は愚痴っぽく呟く。 「そういうわけじゃないんですけど、やっぱ、和也がああいう性格ですから。だからって感じですかね」  裕実は少し機嫌が悪そうで、頬を膨らませながら答える。どうやら和也の子供っぽい行動に少し呆れている様子だ。 「ま、いっか……とりあえず、誰か来た時にはよろしくな」 「はい!」    その頃、和也と雄介は、子供たちが遊んでいた岸壁の方に向かっていた。  岸壁から飛び込んで遊んでいる子供たちを見かけた二人は、近づいて声をかける。 「ちょっと、俺達にもこの遊び教えてくれへんか?」  子供たちは、見慣れない大人たちに警戒している様子で、眉間にしわを寄せ、首を傾げながら二人を見上げる。  その様子を見た雄介は、すぐに何かに気づいたようで、 「あ、せやったな……! 確かに初めましてやから、自己紹介せなあかんよな?」  と言い、自己紹介を始める。 「俺の方は桜井雄介って言うんや。ちょっと前にここに来て診療所の先生してるんやけど、先生って呼ばないでな。雄介って呼んでくれたらええから」  その後、和也も子供たちに合わせて少し身をかがめ、自己紹介をする。 「俺は梅沢和也って言うんだ。雄介と同じで名前で呼んでくれていいから、和也で」  二人はにっこりと笑顔を見せると、子供たちは少し警戒を解いたようで、顔を見合わせる。 「……診療所の先生!? ああ、母ちゃんが言ってた! 診療所ができたけど、島のみんなはあんまり利用してないって言ってたぜ。理由はよくわかんないけどさ。でも、ま、そっちが先生たちなんだな」  子供たちは不安げに話しながらも、少し興味を持ち始めたようだった。

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