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ー信頼ー8
その子供の言葉に、和也と雄介は視線を交わし、しばし黙って考える。
本当に子供というのは純粋で正直だな、と二人は感じていた。
だが、今はそのことよりも、子供達と遊びに来たことを伝えなければならない。
「まぁ、そういうことやからな……ちょっとだけ頭の片隅にでも置いておいてくれたらええから。ま、とりあえず、今は先生って感じじゃなくて、遊びに来ただけやから、仲間に入れてくれな」と、雄介は再び子供達に向かって笑顔を見せた。
その笑顔に、子供達も少し安心したのか、さっきの男の子は大きく頷いた。
「俺の名前は蒼空(そら)って言うんだ……それで、小学四年生!隣にいるのが俺の妹で、星花(せいか)って名前で小学一年生!」
「あー!さっき、俺と道で会った子やんな。星花ちゃんって言うんやな?」
雄介の言葉に、蒼空は妹の星花の方へ顔を向ける。
「さっきねぇ、星花、自転車で転んじゃったの……それで、先生が手当てしてくれたんだよ」
星花は、雄介が手当てした膝を見せながら、嬉しそうに説明した。
その言葉に蒼空は納得したのか、少し安心した表情で言う。
「そっか……もう、膝は痛くないのか?」
星花は大きく頷く。
蒼空は妹を見て微笑んだ後、雄介と和也の方に顔を向け、言った。
「んじゃあ、雄介と和也、一緒に遊ぼうぜ!」
それだけで、子供達との距離がぐっと縮まったように感じられた。
「って、いつも蒼空君達は何して遊んでるんや?」
「俺達の遊びっていうのは、この岸壁から海に飛び込んで、いっつも遊んでるんだぜ」
蒼空は指を岸壁の方に向け、そう言った。
「そないな所から海に飛び込んで怪我とかしてないんか?」
「もう一年生の時から遊んでるから、怖くもないし、怪我もしたことないんだよなぁ?」
蒼空はそのまま岸壁の方に走り出し、勢いよく海へと飛び込んでいった。
その姿を見た雄介と和也は視線を合わせ、言葉なく走り出す。
二人も蒼空に続き、同じように岸壁から海の中へと飛び込んでいく。
海面に顔を出した後、二人は再び視線を交わし、少しだけお互いに感心した様子を見せた。
「海の方も深さがあるから岸壁から飛び込んで来ても大丈夫っていう感じやな?」
「ああ、やっぱり、自然を知ってる子供達の遊びって、ハードな感じなんだな」
二人はその後、砂浜まで泳いで戻りながら、気持ち良さそうに笑い合った。
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