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ー信頼ー10
「ホント、なんなんでしょうねー。 お二人が仲がいいのは分かるんですけど、診療所の方をほったらかしにしてまで遊びに行くなんて!」
「まったく、裕実の言う通りだよなぁ。 二人だけで楽しみやがってー。 俺等は置き去りだしよー」
二人が雄介達の事について文句を言っていると、頭を拭きながら和也と雄介はお風呂から上がって来る。
「はぁ、サッパリしたわぁー。 ほな、飯作るな」
雄介はそう言うと、今日届いたと思われる荷物から食料を冷蔵庫の中へと入れ始める。
そんな中、和也は裕実が座っている横へと座ると、不機嫌そうな二人の姿に気付くのだ。
「どうしたんだよー。 二人共、黙っちゃってるみたいだけど……」
そう軽い気持ちで和也は二人に話しかけたつもりだったのだが、二人から完全に無視された事に気付き一瞬天井を見た和也は次の瞬間には手を叩き、
「あ! そういう事なぁ! 俺等が診療所の事をほっぽってまで遊びに行っちゃったから怒ってるのか?」
和也はそういつもにように望達が心に思っているような事を口にすると、望の方が口を開き、
「そういう事だ……」
その一言に和也の方はひと息吐くと、
「俺達はただ単に遊びに行った訳じゃねぇよ。 先ずはこの島の子供達から話を聞いてみたかったからさ……なんていうの? 島での俺達の噂っていうのを聞いてみたかったっていうのかな? 子供って大人よりも正直で素直だろ? だからな。 だってよー、大人にそこを聞いたって、大人になると正直には話してくれねぇじゃねぇか……だから、子供にそういう事は聞いてみた方が早いって事。 それにそんな事、裕実や望には出来ないだろ? そうそう! それに、診療所の方には真面目な裕実と望がいるんだし、俺達の方は診療所の方は望達に任せてそういう事が出来るって訳だ」
その和也の言葉に納得する事が出来たのか、望は、
「それで、子供達から何か聞けたのか?」
「まぁ、今日は初めて会ったばっかりだったから、そんなに会話みたいなのは出来なかったんだけどさ。 やっぱり、島の住人達っていうのはまだ俺達の事を信用してないって感じだよな。 子供の話によると『俺の母ちゃんは診療所に行く必要がない』ってさ……まぁ、ここの住人はあまり病気とかもしないって意味も含まれているのかもしれねぇけどさ、それでも、やっぱり、一番の要因っていうのは他所者を嫌う島民って事になるのかな? だから、俺達が島の住人達と上手くやっていくには、とりあえず、子供達から味方に付けた方が早いんじゃねぇのかな? 子供は本当に正直だから、思った事を口にする訳だし、俺等がいい人だっていうのが分かれば、当然、親達にも言う訳だしな」
そんな和也が説明している中、雄介の方は料理が出来上がったのか、それをテーブルへと運んで来る。
「まぁ、和也の言う通りって事や……まずは、俺等の方は子供達と仲良くなってくるなぁ」
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