1960 / 2048
ー信頼ー14
二人がいなくなってしまい、今は望と雄介だけがリビングに残っている状態だ。
急に静かになってしまったリビングに、望も雄介もどうしたらいいのか、っていうのが分からないようだ。雄介なんかは今はもう望から視線を離し、完全に瞳を宙へと浮かばせてしまっている。
和也たちがいた時には、こう、いつもと変わらない感じで話せていたはずなのに、二人だけになった途端に急に会話が途切れてしまったようにも思える。
多分、久しぶりの二人だけの空間に意識してしまったってことだろう。
「とりあえずさぁ、和也たちが風呂から上がってきたら、先に風呂に入ってきていいぞー」
と、先に口を開いたのは望だ。
「あ、ああー! せやね……ま、望がそう言うんやったら、先に風呂使わせてもらうわなぁ」
こう久しぶりに二人だけの会話となると、ぎこちなく感じるのは気のせいだろうか。
それだけを雄介に告げると、望は食器を洗い始める。
望が食器を洗っている間、二人の間には会話がなく、リビングには食器を洗う水音だけが響き渡る。
と、そんな時、雄介は突然、椅子から立ち上がり、望がいるところへと向かうと、
「俺も手伝うし……」
「ああ、ありがとうな」
そう言うと、雄介は望が洗い終えた食器を拭き、それを食器棚へとしまっていく。
「なぁ、望……やっぱ、俺等も一緒にお風呂に入らへん?」
その雄介の言葉に、望は動揺してしまったのか、持っていたお皿を滑らせ、床へと落としてしまう。
「……って、大丈夫かぁ!? 怪我とかしてへん?」
そう慌てた様子で雄介は言うと、急いで箒とちりとりを持ってきて、お皿の破片を掃除し始める。
「あ、ああ……まぁ、俺の方は大丈夫だから……」
と望は何か言葉を続けようとしたのだが、急に雄介が望の肩を両手で掴むと、
「なぁ、さっきも言うたけど、ホンマこのままだと俺たちの関係っていうのは、恋人同士やなくて、友達同士っていう関係になってまうで……それと、ホンマこのままやと俺の大学時代と変わらんようにもなってくる。確かにこの状況で望のことを抱くってことはできへんのかもしれへんけど、せめて、寝る前とかお風呂の時には恋人らしいことはしたいと思うとる。まぁ、確かに東京の病院で働いている時よりか、ホンマそこは時間の余裕さえ無くなってるとは思うねんけどな。だけど、診療所にいない時っていうのは俺たちのプライベートな時やんか……せやから、せめて恋人同士らしいことはしてもええんと違うの?」
ともだちにシェアしよう!