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ー信頼ー16
「……強行突破!?」
「ああ! 強行突破やって!」
そう何故か雄介は力強く言うのだ。
「だから、なんだよ……その強行突破っていうのはさぁ」
「要は様子を見ながらっていう事やんな」
「様子を見ながら!?」
「まぁ、望の事を抱く時間っていうのは、一時間から二時間もあれば、済む訳やろー? まぁ、確かに患者さんが来なければ最後までやれるって事になるんやけど、もし、患者さんが来てしまった場合には、患者さんの事を優先すればええって事なんやって。 そうそう診療所のチャイムが鳴れば、こっちの住居の方にも聞こえて来るようにシステムにしてる訳だし、直ぐに動けばなんとかなるやろうしな」
「ああ、まぁ……そうだな。 じゃあ、例えば……」
そう望は言葉を繋げようとしたのだが、望からしてみたら、この後に続ける言葉というのが言い辛いのであろう。 こう視線を逸らしながら言葉を詰まらせてしまったのだから。
「……例えば……って何!?」
「その……だからだな……た、例えばだよ……」
望は顔を赤くし俯けると小さな声で、
「……その……例えば勃ったままの状態だと……直ぐに患者さんの所には行けないような気がするんだけどさ」
「……あ! そういう事な!」
望のその言葉に少し考える雄介。 だが次の瞬間には、
「あ! いい事、思いついたわぁ! 一応、服とかって着るやんか……ほんで、やっぱ、そん時には白衣なんかも着るんやし、確かにスラックスの上からやとバレてまうかもしれへんけど、完全に白衣を着てボタン締めてしまったら見えなくなるんと違う? それに患者さんの事診てたら、ムスコさんだって大人しくなってくるやろ?」
「あー……」
雄介のその言葉に望の方も納得出来たようで、やっと、その事については安心出来たようだ。
「ほなら、もうこういった話し合いっていうのは出来たって訳やし、そういった時間っていうのも取れそうやんな」
「まぁな……」
望の方は今まで悩んでいた事一つが減り、安心する事が出来たのであろう。 今まで俯けていた表情からは笑みが溢れているのだから。
「後はなんかこう悩みみたいなのはあるんか? 悩みがあればみんなでこうして解決していったらええんやないのかな? 望の場合には悩みとかあると自分で抱え込んでまうタイプみたいやしな」
そう言いながら雄介は望に向かって笑顔を向けるのだ。
「そうだな……また、悩みとかが出てきたら言うようにするよ。 今はその事だけだったからさ。 あのさぁ、明日も海に行くのか?」
「まぁ、天気が良かったらな」
「分かった、そこは雄介達に任せるよ。 少しずつでも島の人達と交流して行った方がいいんだしな」
「ま、そういう事やんな」
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