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ー信頼ー19
雄介は和也たちが行ってしまった後、ひと息漏らすと、
「ここでの暮らしっていうのは、悪いこともあるけど、ええこともあるっちゅう訳やんな」
その雄介の独り言のようなつぶやきに、
「まぁ、そういうことだよな」
望はそう答えた。
「和也ってさぁ、やっぱ、すごいよな? 何か考えてなさそうでしっかりと考えてるみたいだしさ。何か俺なんかよりも頭良さそうな感じがするしよ」
「確かに和也ってすごいわぁ。自分のしっかりとした意見とかも持っておるみたいやし、なんやろ? アイツには色々と勝てないような気がしてきたわぁ」
「……色々って!?」
なぜ望はその雄介の言葉に突っ込みを入れたのか? その理由は分からない。しかし、雄介は望の言葉に目をパチクリさせ、望の瞳に視線を合わせた。
「んー……まぁ、そこは……とりあえず、色々とな? 俺の方もその色々に関してはホンマに色々とある訳やし」
雄介は椅子から立ち上がると、
「ほな、俺らも風呂に入って、とりあえず寝ようや。今は確かに暇ではあんねんけど、今度いつ忙しくなってくるか? っていうんは分からへんからなぁ」
「そうだな……」
望も雄介の言葉に頷き、立ち上がると二階へ向かった。着替えを持って再び一階へと降りてくる。
先ほどまで望は雄介に対して少し意識している様子だったが、今はいつもと変わらない感じで雄介に接することができるようになったようだ。
望は脱衣所で洋服を脱ぐと、先に行っている雄介の後を追い、お風呂場の中へ入って行った。
湯船に浸かり、体の力を抜いている雄介は、どうやら一日の疲れをお風呂で癒しているようだった。
「雄介って、やっぱ、浸かるの好きなんだな」
「ん?」
望の声に気づき、雄介は視線を望の方へ向けたが、すぐに正面に戻すと、
「せやね……気持ち的に浸かるのと浸からないのと、疲れ方が違うような感じがするしなぁ。浸かっておくと次の日は体が楽になったような気がするしな」
「んー、まぁ、確かにそこは気持ちの問題だよな?」
望は体を洗いながら答えた。
「まぁ、望の場合は、風呂に入るか? 入らないか? ってところやろな?」
「確かに……俺の場合には入らないと気持ち悪いしさ」
「まぁ、そういうことやんな」
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