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ー信頼ー31
雄介は少し悩みながらも和也の方へと身を乗り出し、
「ほなら、後で見せてな」
「ああ、それは別に構わないぜ」
そう和也から承諾を得ると、雄介は普通に座り直す。
「……って、和也……そんな事を言うって事は、欲求不満なんやろ?」
「当たり前じゃねぇかー、この一ヶ月、丸々そういう事に関してお預け状態なんだぞー。そりゃ、溜まってるって訳だ」
「まぁ、確かに丸々一ヶ月はないわぁ」
「……って言いますけど、無理ですからねぇ」
和也と雄介はこう二人だけでこそこそと話しているつもりだったのだが、そこへ裕実が入ってくる。
「そこはー、無理じゃなくなったやろ?その事については昨日も話した訳やし、まぁ、和也達の方はもう完全に周り気にしないで大丈夫やろうけどな」
「だけど!流石に僕達だって気にしますよー。僕達なんかのプライベートの事より、患者さんの方が大事なんですからね!それに、雄介さん達、お医者さんだけでは診察や治療は成り立ちませんよね?僕は医者と看護師っていうのは、野球で例えるならピッチャーとキャッチャーだと思ってるんですよ。だから、医者と看護師は一緒にいないとダメだと思うんですよ」
「せやから、それは、もし、俺達がプライベートで楽しんでいる時に患者さんが来た場合には、中途半端でも即止めて、治療に当たるって決めた事やろ?」
「あ、そうでした……」
「まぁ、裕実の患者さんを想う気持ちっていうのも、よーく分かったわぁ。せやけど、俺達っていうのは恋人がおんねんから、恋人の方も大事にせなアカンよな?確かに春坂病院にいる時と違って自分のプライベートな時間っていうのは取れへんけど、それでも、上手く取れるように努力はせんとって事なんやって……」
雄介はそう言うと、裕実に笑顔を向ける。
「はい!そうでした」
「みんなアレやな……もう仕事の方がいっぱいいっぱいで恋人の存在を忘れかけてるっていうんか……いつも一緒におりすぎて、それがもう当たり前になってきてるのかもしれへんよな。ホンマ、そんなんやったら、恋人やなくて友達でええやんかってなるやろ?ほなら、流石に恋人の存在っていうのは忘れてはいけないと思うねん。こうして一緒におってもキスもせぇへん、愛の言葉も交わさへん、それに、夜の方もお預けってな、それじゃあ、流石にただの友達にしかならんやんか」
「……だな。確かに雄介の言う通りだわぁ。あまりにも一緒にいすぎて恋人の存在を見失いかけてたように思えるしな」
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