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ー信頼ー43

「因みに望は、どんなことを俺としたいん?」  今日の雄介は、どうしてこうも望に意地悪な質問をしてくるのだろうか。普段なら、あまり望には言わないようなことを平気で口にしているように思える。  だが、今日の望は、そんな雄介の質問にも素直に答えてくれている。そのため、雄介の方も調子に乗ってしまっているのだろう。  今まで雄介の意地悪な質問に答えてきた望だったが、この質問にはさすがに言葉が出ないのか、なかなか口を開こうとはしない。それとも、もっと真剣に考え込んでいるのかもしれない。  しばらくの間、二人の間には沈黙が流れた。部屋の中は静まり返り、窓の向こうから波の音だけが聞こえてくる。 「……とりあえず、イチャイチャするってのがよく分からないんだけど?」 「あー、確かに、望の場合には分からへんことなのかもしれへんなぁ? ほなら、またキスぐらいならしてもええ?」  そうストレートに言われると、望は意識してしまったのか、体を固まらせた。 「……望……そないに緊張せんでも大丈夫やって。ただのキスなんやしなぁ。それに、俺とのキスっていうのは初めてじゃないやろ?」 「あ、だからだな……その……久しぶりにゆっくりと二人きりってのでな。意識しちまってるのかもしれねぇんだけど。ほら、前はしょっちゅうキスしてたけどさ、こう……あまり意識してなかったのかもしれねぇが……今はな……」 「ん……まぁ、そういうことか」  雄介は、まず望の額にそっとキスを落とした。  すると、額に触れただけにも関わらず、望の鼻から甘い息が漏れた。 「今は額にキスしただけやで……」 「しょ、しょうがねぇだろー、久しぶりなんだからさ……それに、お前だから……その……声が出ちまうっていうだけで……」  最後の方は、小さな声で、雄介から視線を外しながら言う望。 「キスだけでそんな声出しておったら、ホンマに襲ってまうで……」  その雄介の言葉に、望は雄介の頬を両手で包み、自分の方へと引き寄せる。そして、望自ら雄介の唇に唇を重ねた。 「……だったら来てみろよ」  そう言う望の言葉に、雄介は少し驚いたように首を傾げた。そして、何かを思い出したのか、望の額に手を置いて熱を計る。 「……やっぱりか。風邪引いたんやったら、ちゃんと言いなぁ。そこは、もう子供じゃないんやからなぁ」

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