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ー信頼ー44
雄介はそう言いながらベッドから起き上がると、電気を点けて階下へと向かった。
その行動に、望は思わず目で追ってしまう。きっと、診療所へ行って薬でも取りに行ってくれたのだろう。
しばらくして雄介が戻ってくると、手には薬や水だけでなく、聴診器まで持っていた。
「そんなもん持ってきて、お医者さんゴッコでもする気か? どうせ風邪なんだから薬だけでいいだろう?」
「まぁ、ええやんか。俺はもうお医者さんゴッコじゃなくて、本物のお医者さんなんやけどな。それに、もし風邪じゃなかったらどうするんや? 一応、ちゃんと診ておかんとな」
「風邪以外ってことは、ほぼ無いと思うけど……」
「まぁええから、ええから……ほな、まずは口開けてな」
「あ、ああ……うん……」
望は呆れたようにため息をつくが、恋人に診てもらえるという気持ちもあってか、素直に従う。
「やっぱり喉が赤くなってるなぁ。次は聴診器で胸の音聞かせてや」
「あ、ああ……」
望は言われるまま、パジャマの前を捲る。
「胸の音も異常なしや。やっぱり、ただの風邪やな」
「あ、まぁ……そうだろうな……」
「なんや、それやと不服そうに聞こえるけど、何が不満なん?」
「分からねぇのかよ……ここまでやっておいて、その先はやらねぇのか? って思っただけだよ」
望の挑発的な言葉に、雄介はふと思い出す。
そういえば、望は最近風邪も熱も出していなかった。そのせいで忘れていたが、望は風邪をひくと妙に積極的になるのだ。
雄介は手で顔を覆い、深いため息を吐く。
「とりあえず、今日はやめとこ。ホンマに今はお医者さんゴッコやないからな。ただ、望のこと診てあげただけやし。お医者さんゴッコの方はまた今度な。望がちゃんと風邪を治してからにしよ」
しかし、その言葉で望が簡単に引き下がるわけもない。
「ただの風邪なら、数日で治るんだから平気だろ?」
「いいや、それは絶対アカン。風邪の時は体が休みたいって訴えてる時やねん。だから、体を休ませることが一番なんや。それに、風邪を馬鹿にしたらあかん。風邪は万病の元って言うし、ちゃんと治るまで寝るのが一番大事やねん」
雄介は医者としての知識をもとに、堂々と説明して説得しようとしている。その表情は真剣そのものだった。
そして、雄介は一旦呼吸を整えると――。
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