1991 / 2048
ー信頼ー45
「望が風邪をこじらせて死んでしまったら、俺と楽しいことだってできなくなるんやから。とりあえず、今日は望のことを診るだけやで」
雄介のその言葉に、望は拗ねたように「分かったよ!」と言い放つと、反対側に体を向けてふて寝をしてしまう。
そんな望を見て、雄介は呆れたようにため息をつき、部屋を出て行った。
しばらくして戻ってきた雄介が目にしたのは、薬が効いたのか、すっかり眠り込んでいる望の姿だった。
雄介は安堵のため息をつき、静かにその様子を見守る。
とはいえ、雄介も思うところがある。望が熱を出した時に見せる積極性は決して嫌いではない。むしろ愛おしく思うことさえある。ただ、それをうまくかわすのが大変だ。
翌朝、雄介は早起きし、キッチンで朝食を準備していた。
そんな中、裕実と和也が揃って起きてきた。
「おっ、雄介、おはよー」
「おう、おはよー」
「あれ? 望は?」
いつもなら和也よりも早起きしてソファで新聞やニュースを見ている望がいないことに気づいた和也が尋ねる。
「ちょっとな……望、風邪ひいてもうたみたいやから、今日はまだ寝てるわ」
「あ、なるほどなぁ、そういうことだったのか……」
「望の奴、ここんとこ大変やったみたいやしな。疲れがたまって免疫力が落ちてしもたんやろな」
「まあ、そういうことだよな。本当、望は一人で頑張りすぎなんだよな」
「せやな……」
「あ! そういえば、昨日から望さん変でしたね。素直っていうか、普段の望さんじゃ考えられないような感じで……」
裕実が思い出したように言うと、和也も思い当たる様子でニヤリと笑う。
「確かに! ってことはさ、昨日、雄介は望に襲われちゃったんだろ?」
和也は雄介をからかうように視線を向けるが、雄介は全く動じずに答えた。
「まあな、襲われかけたけど、何とかかわしたわ。俺は熱出してる奴に手を出すほど飢えてないしな」
ともだちにシェアしよう!