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ー信頼ー48

 和也が診療所の鍵を開けると、子供達が待ちきれない様子で瞳をキラキラとさせながら待っていた。 「お前たち、早いなぁ」 「だって、すっごく楽しみにしてたんだもん!」 「そうだったのか」  診療所の前にいた子供達の人数は、昨日と比べて増えているようだ。昨日海に来ていた子供達は五人ほどだったが、今は十人近くになっていた。きっと、蒼空たちが島に住んでいる他の子供達を集めてきてくれたのだろう。  この小さな島では、子供達の数が多いわけではない。先日、和也たちが歩いて見つけた島の学校は一つしかなかった。おそらく、小学校と中学校が同じ校舎にあり、クラスだけが違うのだろう。  その学校の小学生は全校生徒で十人程度しかいない。都会に比べて少人数の中で、仲間意識が強く、みんな仲がいいのだろう。さらに、この島は小さく、携帯電話などを使わなくてもすぐに仲間へ連絡が取れる環境が整っているようだ。  今、携帯などの電子機器が発達している中で、すぐに連絡が取れる道具があるのは便利だが、この島ではそれが必要ないのだろう。実際、望達もここに来てから一度も携帯を使った記憶がない。 「……え? もう、来たんか?」 「うん! みんなに話したら、やりたい!って言ってくれたから、連れてきちゃった」 「そうか、別に構わんで」  雄介は優しい笑顔で子供達を迎え入れる。その自然な笑顔は、まるで小児科医らしいもので、望とは少し違って、雄介の笑顔は自然と溢れ出るものだ。望も最近は笑顔を見せるようになったが、どこか営業スマイルのような感じがして、自然には見えない。  今日は水着ではなく、何かあった時に対応できるようにと白衣を着て出てきた雄介。診療所に子供達が来るということで、雄介は診療所内も案内し始める。  第一の目的はちびっ子消防団だが、診療所としても開院しているので、子供達に診療所の印象も残しておこうという考えがあったのだろう。

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