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ー信頼ー53

 診療所に到着すると、雄介はすでに蒼空の診察を始めていた。呼吸も乱さず、真剣な表情で処置にあたる姿に、和也は驚きを隠せない。 「この傷、深いな……縫わなあかんな」  雄介は蒼空に優しく声をかける。 「蒼空、もう少しだけ痛いけど我慢してな。すぐ治したるからな」  蒼空は小さく頷いたが、その顔には不安の色が浮かんでいる。  その様子を見た雄介は、ふと和也の方に視線を向けた。 「なぁ、和也。足の骨は折れてなかったみたいやけど、出血が酷いねん。輸血せなあかんかもしれへんから、血液型を調べてくれへんか?」 「でも、それって望じゃないと……」 「あ、そうやったな……。望、大丈夫なんかな? とりあえず無理やったら、俺らで何とかするけど、手伝ってくれるなら助かるわ」  二人は小声で相談し、和也が診察室を出ようとしたその時だった。診察室のドアが勢いよく開き、望が現れる。 「……望!? 大丈夫なんか?」  雄介が驚いて声をかけると、望は少し疲れた表情で答えた。 「……下でバタバタ音がしてたから、何事かと思って来たんだよ。っていうか雄介、なんで下着一枚で診察室にいるんだ? 状況は後で聞くとして、とりあえず服を着て来い! ここは診察室だぞ!」  望の冷静ながら厳しい声に、雄介は慌てて答える。 「あ、スマン……! すぐ着替えて来るわ」  そう言うと、雄介は診察室を出て、着替えに向かった。

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