2000 / 2048

ー信頼ー54

 和也は蒼空を背負ったまま慌てて帰宅し、その後、雄介の服を持って戻ってきた。それを雄介に渡すと、雄介は服を受け取り、一旦二階へと上がった。  その間に、望は蒼空に近づき、簡単に診察を始める。 「雄介はなんて言ってた?」 「骨には異常はねぇって……だけど、出血が酷いから、輸血くらいは必要だな。それに、縫わないといけないって言ってた」 「輸血な……。とりあえず、この子の血液を調べることはできるけど、保存している血液は無いんだ。蒼空と同じ血液型が必要だな」  望は手際よく蒼空から血液を採取する。それとほぼ同時に、雄介が診察室に入ってきた。 「雄介、とりあえず蒼空の足を縫ってくれ。俺は血液型を確認してくるから」 「ああ」  雄介は望の言葉に頷くと、診察室の椅子に座り、黙々と作業を進めるのではなく、蒼空と会話をしながら縫い始めた。 「蒼空、今度、山に蝉取りに連れて行ってくれへんか? 俺、久しぶりにそういうことしたいんや。子供の頃はよくやったけど、大人になってからは全然できてへんねん。それに、都会に住んでた時は、そういうの全然できんかったしな」 「蝉よりカブトムシがいい!」 「……へ? カブトムシがおるんか? そりゃ、蝉よりカブトムシの方がええやん。っていうか、都会にはカブトムシなんておらんで。寧ろ、デパートで売ってるくらいや」 「えー!? カブトムシが売ってるの!? ここなら取り放題なのにねー」 「そうなんやってー! でも、取り放題なんは羨ましいなぁ」  雄介は蒼空に合わせて会話を続けていると、縫い終わる頃に望が診察室へ戻ってきた。 「とりあえず、蒼空の血液型はB型だった。だから、和也が確かB型だったよな? 和也から血をもらった方がいいかもしれないな」 「そうだな。それなら俺の血を使ってくれ」 「まぁ、和也くらいなら大丈夫だろ。裕実からだったらちょっと不安だけどな……。うん、とりあえず和也から血を抜くのは裕実がいいか? それとも俺がやるか?」 「別に俺からすればどっちでもいいけど」 「そうか。それなら裕実にやってもらって、その間に俺はいろいろやっておくよ」 「ああ、分かった」

ともだちにシェアしよう!