2002 / 2043
ー信頼ー56
素直な望に、一瞬、雄介は頭にハテナマークを浮かべたが、すぐに望が熱を出していることを思い出し、素直な反応だということを再認識したのかもしれない。
「まぁ、今回は蒼空一人だったから、どうにか一人でできたようなもんなんやけど、これが複数人となると、さすがに一人じゃできへんで……。それに、俺一人じゃなかったやんか。最終的に裕実や望や和也がいたからこそ助けることができたんやしな。だから、みんながいなかったらできなかったことなんやって……って、望の方は大丈夫なんか?」
「まぁ、今のところは大丈夫かな?」
「今のところはって……ところが引っかかんねんけどな」
雄介は望の顔を心配そうに見つめる。
「だ、大丈夫だって!」
「そうやって焦ってるところを見ると、怪しいねんけどなぁ? 確かに今は緊急事態やったから、望に手伝ってもらったけど、もう後は蒼空の輸血が済んだら終わりなんやから、もう望は休んどきっ! それに、呼吸もまだ荒いみたいやし、全然完璧じゃないって証拠やからなぁ。まぁ、望の場合、額すら触れさせてくれんやろうし、俺が今の望を見て診断しただけやけどなぁ。少なくとも、しんどそうなのは確かやな」
望はそんな雄介にため息をつくと、言った。
「お前って医者になると怖いのな。ってか、飲み込みが早いっていうのかな? 医者になって数年しか経ってないはずなのに、もうベテランな医者って感じだしよ。本当、何があってもお前に任せられるって気になってきたな。お前が医者になる! って決めてから、あんなに言い合いしたのにさ」
「そんなん、望がいたから頑張れたんやで……ホンマ、勉強なんて嫌いやったしな。ホンマ、今は望のことを好きになって良かったって思うてる。望のこと好きになってなかったら、医者になるって選択肢なんか俺にはなかったと思うしな」
雄介からの久しぶりの愛の言葉に、望は軽く微笑んだ。
確かに、ここに来てから忙しい日々を過ごしていた雄介たちだったが、本当に久しぶりに雄介から愛の言葉を言われたような気がする。長年一緒にいるからか、逆に相手が恋人だということを忘れてしまっていたのかもしれない。でも、今回雄介が久しぶりにそんなことを言ったから、望は雄介と恋人関係だったという事実を思い出すことができたのだろう。
「ほな、望は大人しく寝とるんやぞ……そこは医者命令やからな!」
「分かったって……」
望は雄介に言われた通り、自分たちの部屋へと向かい、雄介は再び蒼空がいる診察室へと向かっていった。
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