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ー信頼ー59

 暫くして、和也は雄介がいる診察室へ戻って来た。 「こちらが薬になります」  和也は蒼空の母親に向けて薬の説明をすると、笑顔で薬を渡した。 「ありがとうございます」  その時、蒼空がベッドから起き上がり、元気そうな声で言った。 「もう、俺、大丈夫!」 「そっか……。まぁ、また何かあったら、すぐにここに来てな」 「うん!」  蒼空は雄介に笑顔を向けると、母親は蒼空を背負いながら頭を下げた。 「今日は本当にお世話になりました。また何かあった時にはよろしくお願いしますね」 「はい」  そう言って、蒼空親子は診療所を後にした。  雄介は安堵のため息を吐き出すと、和也に向かって言った。 「ほな、飯にしようか? 昼過ぎてもうたしな」 「そうだな」  気づけば、時計の針は十四時を過ぎていた。  普通の病院で仕事をしているなら、不規則な時間に食事をするのは当たり前だ。遅くなったとはいえ、食事が取れるだけでもありがたいのかもしれない。  雄介がご飯を作っている間、和也と裕実はテーブルで話をしていた。 「なるほどなぁ。蒼空のお母さんが言ってたけど、『信頼』っていうのが、まだ、今の人たちと俺たちの間にはなかったってことなんやな。確かに、本当に知らない人に体を預けるってなると、信頼関係がなければダメってことになるよなぁ」 「まぁ、そういうこっちゃな。島の住人からの信頼も大事やけど、俺らの方もお互いに信頼し合わなアカンってことやんな」 「ま、そういうことだよな」  雄介は出来上がったご飯をテーブルに並べた。  午後になると、診療所は相変わらず穏やかな時間が流れていった。  夜になり、夕飯の時間。望も起きて来て、雄介に声を掛けた。 「もう、大丈夫そうなんか?」 「ああ、まぁな。風邪って言っても熱だけだし、熱が落ち着けば大丈夫やろ」 「せやな……確かに顔色も悪くなさそうやしな。ほな、飯食おか? とりあえず望も起きてきたし、胃に優しいもんがええやろ。ほな、冷やしうどんにしよか。これなら茹でるだけやし簡単や」 「ああ、そうだな」  その時、和也が茶化すように声を上げた。 「なぁなぁ、望ー、お前、雄介と一緒になって良かったな!」 「……へ? ちょ、いきなり何だっつーの……」

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