2005 / 2043
ー信頼ー59
暫くして、和也は雄介がいる診察室へ戻って来た。
「こちらが薬になります」
和也は蒼空の母親に向けて薬の説明をすると、笑顔で薬を渡した。
「ありがとうございます」
その時、蒼空がベッドから起き上がり、元気そうな声で言った。
「もう、俺、大丈夫!」
「そっか……。まぁ、また何かあったら、すぐにここに来てな」
「うん!」
蒼空は雄介に笑顔を向けると、母親は蒼空を背負いながら頭を下げた。
「今日は本当にお世話になりました。また何かあった時にはよろしくお願いしますね」
「はい」
そう言って、蒼空親子は診療所を後にした。
雄介は安堵のため息を吐き出すと、和也に向かって言った。
「ほな、飯にしようか? 昼過ぎてもうたしな」
「そうだな」
気づけば、時計の針は十四時を過ぎていた。
普通の病院で仕事をしているなら、不規則な時間に食事をするのは当たり前だ。遅くなったとはいえ、食事が取れるだけでもありがたいのかもしれない。
雄介がご飯を作っている間、和也と裕実はテーブルで話をしていた。
「なるほどなぁ。蒼空のお母さんが言ってたけど、『信頼』っていうのが、まだ、今の人たちと俺たちの間にはなかったってことなんやな。確かに、本当に知らない人に体を預けるってなると、信頼関係がなければダメってことになるよなぁ」
「まぁ、そういうこっちゃな。島の住人からの信頼も大事やけど、俺らの方もお互いに信頼し合わなアカンってことやんな」
「ま、そういうことだよな」
雄介は出来上がったご飯をテーブルに並べた。
午後になると、診療所は相変わらず穏やかな時間が流れていった。
夜になり、夕飯の時間。望も起きて来て、雄介に声を掛けた。
「もう、大丈夫そうなんか?」
「ああ、まぁな。風邪って言っても熱だけだし、熱が落ち着けば大丈夫やろ」
「せやな……確かに顔色も悪くなさそうやしな。ほな、飯食おか? とりあえず望も起きてきたし、胃に優しいもんがええやろ。ほな、冷やしうどんにしよか。これなら茹でるだけやし簡単や」
「ああ、そうだな」
その時、和也が茶化すように声を上げた。
「なぁなぁ、望ー、お前、雄介と一緒になって良かったな!」
「……へ? ちょ、いきなり何だっつーの……」
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