2006 / 2043

ー信頼ー60

「だってさぁ、雄介って、頭いいし、ルックスもいいし、運動神経だって悪くねぇし……俺もそんな雄介に惚れちゃうかもー」 「ちょ、マジ、いきなり何を言っちゃってるんだよ」 「だってさぁ、いやー、今日の雄介っていうのは、マジにカッコ良かったんだからな。多分、望もその雄介の姿を見てたら惚れちゃうと思うぜ。だってよ、蒼空が海で溺れた時に、まずは走りながら服脱いで海に飛び込んだだろ。それで蒼空のことを助けただろ。今度は蒼空のことを背負って診療所に走ってっただろー。で、診療所に入ってからは蒼空のことを治療したわけだろ。それを雄介は一人でやったってわけー!」  和也は興奮気味に話している。 「ぅん……まぁ、でも、当たり前のことをしたまでで……かっこいいとは……」  その望の言葉に、和也と裕実は視線を合わせてクスリと笑う。 「これで、いつもの望に戻ったな」 「ですね。本当に望さんはいつもの望さんに戻ったって感じがしますよね」 「って、お前らなぁ、聞こえてるんですけどっ! って、いつもの俺ってなんなんだよ」 「……って、望はまだ自覚ねぇの? 望はさ……熱出した時に素直になる性格になるってことをさぁ」  和也の言葉に、望は顔を逸らし、頬を赤らめる。 「そういう行動をするってことは自覚あんだろ?」 「良くは分からないんだけど……。確かに、いつもの自分とは違うことを言っているような気がするな」 「それが、素直なことを言ってる望になるんだよ。でもさぁ、前までは熱が出てる時っていうのは、自覚が無かったっていうのか、意識がなかったっていうのか、そんな感じだったんだけど、今は熱を出しても意識があるってことは、もしかしたら、もう記憶喪失の時の後遺症が治りかけてきてるんじゃねぇのか?」 「そうなのかもしれへんなぁ。まぁ、後は環境が変わってきたっていうのもあるんやろうし、その記憶喪失から大分時間が経ってきてるっていうのもあるからなのかもしれへんなぁ」 「それって、いいことなんじゃねぇのか? まぁ、後は望が俺たちのことを信頼してきているってことなのかもしれねぇよな」 「ああ、まぁ……信頼はしてきているのかもしれねぇよな」  望のその言葉に、三人は視線を合わせて目を丸くする。すると雄介は慌てて、 「ちょ、ホンマに望、まだ熱があるんと違う!?」  そう言いながら、望の額に手を置き、熱を測ろうとした。 「あー! たまに、マジに言ってみるとこうなるんだもんなぁ。だから、素直になれないっていうのもあるのかもしれねぇな」 「大丈夫だって……ちゃんと分かっておるから。今の望は本気で言ってたってことがな」

ともだちにシェアしよう!