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ー信頼ー61

 望はその雄介の言葉にひと息吐く。 「無理せんでもええからな……望は望らしくおってくれたらええと思うし」  そう雄介は望に向かって笑顔を向ける。  それを見た和也は茶々を入れ、 「本当、望と雄介って熱いんだな。なんていうのかな? 確かに俺達もラブラブなんだけどさ、俺達は表に出したラブラブなカップルって感じなんだけど、望達っていうのは心で通じ合ってるようなラブラブっていうのかな? そんな感じなんだよなぁ」 「確かに和也の言う通りですよねぇ。でも、それはそれで素敵な感じがしますよ」 「ん……まぁ……まぁな……」  雄介は二人の言葉に曖昧そうな返事をしながら、望の様子を伺うようにちらりと見上げた。  そんな雄介に気付いたのかは定かではないが、望は、 「当たり前だろー。俺と雄介っていうのは、そんな仲なんだからよ」  と素直に答えた。すると、和也達は視線を合わせる。  その三人の行動に気付いた望は、小さな声で、 「……ったく。俺が素直な所にそろそろ慣れろっつーの……」  と突っ込んだ。その小さな声のおかげか、三人には聞こえなかったようだ。  その後、四人はいつものように夜を過ごした。  雄介と望は一緒にお風呂へ入り、雄介が口を開く。 「なぁ、今日、蒼空のオカンが言っておったんやけどな。今日、俺が蒼空を助けたことが明日にはもう島中に広がっているかもしれないって言っておったんやけど、どういう意味なんやろな?」 「え? それって、いいことなんじゃねぇのか? 今まで、島の人達には俺達のことを良く分かってもらえてなかったんだからさ。今回のことで分かってもらえたってことなんだろうしな」 「あ、あー!!」  急に雄介が大声を上げた。 「そんなにでかい声出すなよなー。ここは風呂場なんだから響くだろうが……」 「せやせやせや! 何か俺達、大切なことを忘れてないか? 確かに今まで自分達のことだけで精一杯で、そっちまで頭が回っておらんかったけど、ここに来てから島中の人達に挨拶もしておらんかったやんか。そんなんで診療所に来てもらおうと思ってたのが間違ってたんと違うか? そりゃ、引っ越しして来たなら挨拶するのは当たり前やんかー。挨拶もコミュニケーションも取らんと開院したのが間違っておったんと違う?」 「あ、そっか……そんな初歩的なことを俺達は忘れてたってことか……。確かに雄介達が蒼空達に近付いていったのも良かったんだけどな。でもやっぱ、挨拶っていうのは大事だもんな。それ確かにした方がいいのかもしれねぇぜ。明日から、往診がてらやってみたらいいのかもな」

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