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ー信頼ー63

 望たちが住む島はそれほど大きくない。人口も少なく、一日あれば一通り回れる程度だ。  挨拶回りを半分ほど済ませた頃、学校の横にある小高い丘の上に一軒家が見えてきた。そこにも向かうべく四人は丘を登り始める。  道は獣道程度で、幅は人が一人通れるほど。季節柄、雑草が生い茂り、それを掻き分けながら進むしかない。雄介や和也はこうした道に慣れているようだが、裕実と望は足元がおぼつかず、やや遅れ気味だった。暑さもあってか、息が上がっているようだ。 「望、裕実、大丈夫か?」 「ま、とりあえず、俺は大丈夫だ」 「ぼ、僕も大丈夫ですけど……」 「無理せんと、しんどかったら言うてな。後は俺と和也で行ってくるから」 「だけど、俺たちが行かないと意味がないだろ。往診は俺たちの仕事なんだし」 「あ、せやったな。ほなら頑張るしかないな」 「そういうことだ」  四人は何とか丘の上まで登り切った。 「やっと着いた……」 「まぁな……」  雄介が先に家のチャイムを押す。  応答して出てきたのは顔なじみの蒼空だった。 「あ! 雄介先生!」 「そうか、ここは蒼空の家やったんか」 「うん! それで、今日はどうしたの?」 「あ、そうやったな……」  蒼空の言葉に促され、雄介は少し考え込んだ様子を見せた後、小声で何かを呟いた。 「お母さん、いるか?」 「うん!」  蒼空は大きく頷くと、家の中へ戻って行った。そして、雄介に言われた通りお母さんを呼びに行ったようだ。  しばらくして現れたのは、蒼空の母親だった。 「あら、桜井先生。今日はどうなされたんですか?」 「あ、今日は診療所が休診日なので、島の皆さんに挨拶回りをしているんです」 「そうだったんですか。わざわざありがとうございます」  雄介は軽く会釈をすると、今度は蒼空に視線を向けた。 「蒼空、足は痛くないか?」

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