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ー信頼ー68

 望は、今まで胸の内に溜め込んでいた不安をぶつけるように、雄介に自分の思いを伝えた。  そんな望の言葉を聞いて、雄介は穏やかに微笑みながら言う。 「大丈夫やって。このままずっと、俺は望のことを好きでおるし、離れようなんて思わん。だから、安心してな。俺は俺で、ホンマ望のことを好きやから」  その言葉に、望はぽつりと呟く。 「……男のことを好きになっちまう俺って、変なのかな?」  雄介は少し驚いた表情を見せたが、すぐに優しい口調で答えた。 「別に変じゃないやろ? 世の中には色んな人がおるわけやし、人それぞれやって。もしかして、そのことも不安やったんか? そんなん言うたら、俺もそうやんか。そないなことで、もう不安になることなんかない。俺は望のことを本気で好きやし、遊びで付き合い始めたわけでもない。せやから、将来のことも考えて医者になったんや」  雄介は少し間をおいて続けた。 「確かに俺たちは男同士やから、結婚することはできへん。でも、同棲までは今の世界で許されてるやろ? それでずっと望と一緒におれるんやったら、俺はそれで十分幸せやと思ってる」  望は視線を伏せながら、小さな声で言った。 「……俺さ……初めはお前のことを嫌いだったんだよ」  その言葉に、雄介は少し驚いたような表情を見せる。だが、すぐに何かを思い出したのか、望も自然と微笑みを浮かべた。  そして、望は初めて雄介に会った頃のことを思い出しているようだった。 「まぁ、そこはな……俺が悪かったし。望のことを女医さんと間違えたのが原因やったからな」  雄介は場を和ませるように軽く冗談めかして言った。だが、望の鋭い視線に気付き、慌てて話を戻した。 「あー、スマン……話の腰を折ってもうた。ほんで?」  望は少し俯きながらも、雄介の言葉をきっかけに、再び語り始めた。 「だけど……お前に告白された後、色々考えたんだよな。初めは『試しに男と付き合ったらどんな感じなんだろう?』っていう興味からだった。だけど、付き合っていくうちに、俺の方がだんだんお前のことを好きになってた。そん時、和也からも告白されてたんだけど、なんか違うって感じてたんだよ」  雄介は安心したように微笑む。 「そっか……それなら良かったわぁ。俺だけが望のことを好きやったんやなくてな。それにな、今更望と別れるなんてなったら、俺が医者になった意味も無くなるやん。俺が医者になった理由って、ホンマ望のためでもあったんやから」  雄介は望を見つめながら、ゆっくりと言葉を続けた。 「ずっと望のそばで働けるし、医者って多分、消防士より死亡率は低いやろ? それなら、望に心配かけんで済むしな。それで、望のために医者になるって決めたんや。確かに望は俺が医者になることを反対しとったけど、それでも俺は、望のそばでずっとおりたかったし、望の助けになりたかったんや」

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