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ー信頼ー78

「ご飯出来たぜー」 「ああ」  そう雄介は返事すると、テーブルへ向かった。 「今日は焼肉ー」 「おっ! ええねぇ!」 「ま、また……料理って言えるようなもんじゃねぇけどな」 「ええって、作ってもらっただけでも感謝しとるしな」 「でも、雄介って何でも作れるのなぁ。久しぶりに冷蔵庫の中を覗かせてもらったけど、たった週に一度の定期便で食料を運んでもらってるだけなのに、その中からちゃんと料理を作ってるんだもんな」 「ぅん……まぁな。だけど、アレやなぁ。望の親父さん、毎週、毎週、俺たちのために食材を送ってくれてるんだよな。食費だって馬鹿にならないんじゃないの?」 「そこは親父が俺たちをこの島で働かせているんだから、いいんじゃねぇの?」 「それで給料も別に出てるし、この島でお金を使うことなんてほとんどないしな」 「貯金が貯まるよな? まぁ、俺の場合にはお袋に仕送りしてるから、余った分を少し多く送ることもできるけどな」 「……和也ってオカンに仕送りしてたんか?」 「あれ? 言ったことなかったっけ? 専門学校に行ってる時、学費は親に出してもらってたからな。それを返してたんだけど、それはとっくに終わってる。それでも急に仕送りを止めるのが不安っていうか……。それに、お袋はもう仕事引退してるだろうし、一人だからなぁ。年金だけで食べていけてるのか心配でもあるんだよ」 「……って、どれだけオカンに連絡してないん? まぁ、俺も人のこと言えんけどな……。ウチも親父がそろそろ引退の時期やろうし、気になってきたかもな」  和也の言葉で、二人はそれぞれの親のことを思い出した。  そう、もう雄介たちの世代は三十代を超えている。親の世代は、早い人であればそろそろ仕事から引退する時期なのかもしれない。 「それを考えると、医者には引退の時期っていうのはないんやろなぁ」 「確かに、六十歳を過ぎても頑張ってる人はいるよな。でも、看護師でそんなに長く働いてる人っていうのはあまり見ないかも。白髪のナースって見たことないし、婦長さんとかベテランでも四十代くらいかな?」 「まぁ、女性が体力的に頑張れるのはそれくらいの歳やと思うから、そうなるんやと思うな」 「なら、ウチのお袋もそろそろ隠居生活を始める頃なんやろな。後で久しぶりに連絡してみるかな。今、俺がこの島で働いてることも知らないだろうし」

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