2027 / 2073

ー信頼ー81

「まぁ、そういうことやね。ホンマに綺麗やわぁ」  望たちは自然が作り出す神秘的な光景に、言葉を失いながら見上げた。  本当に感動的なものや美味しいものを目にしたり味わったりすると、言葉にできないほど感動してしまう。その意味で「言葉を失う」という表現が使われるのだろう。  自然というのは、時に人間には作り出せないような神秘的なものを生み出す。滝や山、川なども、自然が織りなす美しい景色であり、自然が作るからこそ特別に感じられるのだろう。もしこれが人工的に作られたものだったら、同じ感動は得られないかもしれない。  天の川――それは無数の星々が織り成す光の流れだ。昔話の「織姫と彦星」では、七月七日の晴れた日にだけ二人が会えると言われている。しかしその日に雨が降ると、天の川の水嵩が増して橋が渡れなくなり、二人は再会できないという切ない話だ。 「ホント、すっげぇな……。都会では夜景が星や宝石箱みたいだって言うけど、やっぱ本物とは比べものになんねぇな。自然が作り出すものだからこその美しさっていうか……。言葉にならないって、こういうことを言うのかもな。とりあえず、外に出てきて損はなかっただろ?」 「そうやなぁ。和也が慌てて部屋に来たときは何事かと思ったけど……まぁ、ええわ。今日はいいもん見れたしな」 「せやなー。ホンマ、自然っていうのは偉大やって感じやなぁ。いやー、しかし、この辺りは静かやなぁ。波の音しか聞こえへんし」 「それにな、東京と比べたら涼しいよな。なんか、空気がひんやりしてる感じだしさ」 「そうそう! 東京の夏に比べたら、全然ちゃうわぁ。東京の夏って、べたーっとした暑さやん? あの感じが嫌なんよなぁ」 「東京の夏は湿気もすごいし、ビルが多すぎて土や草がほとんど無いからな。それに木々も昔に比べて少なくなった。コンクリートばっかりの街だから、昼間の太陽がコンクリートを熱して、それが夜になっても冷めへんねんて。それで夜も暑いままってわけや」 「ほな、東京もこの島みたいに自然が豊かやったら涼しくなるんかな?」 「そうかもな。ただ、東京をこの島みたいにしちゃったら、働く場所が無くなって経済が止まっちまうんじゃねぇか?東京は東京で、あれがベストなんだと思うぜ。のんびりしたけりゃ、こうして休みの日に旅行すればいいんだしよ」 「せやな。ホンマ、こういうとこに来たら気分転換になるわぁ。ほな、そろそろ部屋戻ろか?風呂入らなあかんし」 「せやな……。まぁ、今日は望にすっぽかされて一人で入ったんやけどな」

ともだちにシェアしよう!