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ー信頼ー82
「あっ! そういやー、俺が部屋に入ったとき、望もリビングに居ったな? やっぱり、望は未だに雄介とお風呂に入るのが恥ずかしいとか?」
和也が茶化すように言うと、望はすぐに顔をしかめた。
「そんなんじゃねぇよ。和也が外に電話しに行ったから、裕実一人じゃ可哀想だと思ってよ。雄介と入らなかっただけだ」
「あー、なるほどね。まぁ、そういうことにしといてー……ってことは、望は裕実と何か話したんか?」
和也の何気ない質問に、望は思わず目を丸くした。
確かに、雄介とお風呂に入らなかったということは裕実と二人きりだった時間があったわけで、和也の指摘通り、何も話さないというのは不自然だ。
「とりあえず、俺は裕実には聞いてはいけないようなことを聞いたような気がすんだよなぁ」
望がぼそっとそう言ったものの、具体的な内容には触れていないため、和也も雄介も「?」という顔をする。
すると、今度は裕実が口を開いた。
「だからですねー、望さんは僕に聞きたいことを質問してくれたんですよ。ほら、二人きりだったから、話下手な望さんが一生懸命考えて会話してくれたんだと思います」
裕実は先ほど望と話した内容を、笑顔で説明し始める。
「なるほどなぁ。まぁ、そういうことなら、望がそう答えるのも分かるわ」
「まぁ、そういうことか……。とりあえず、俺、一人で風呂に入ってくるな」
「……へ? 裕実と入らんでええの?」
「今日は雄介一人でお風呂に入ったんだろ? なら俺も一人で入るよ。ここで裕実と入るなんて言ったら、裕実に怒られそうだしな」
「当たり前です! 望さんたちに失礼ですからね!」
「はいはい、分かったよ……じゃ、行ってくる」
和也は軽く手を振ると、お風呂へ向かった。
「ホンマ、和也って物分かりがええっちゅうんかなぁ? 場の空気を読むのが上手いっちゅうんかなぁ? 頭がええって言うんかなぁ? アイツと居るとホンマ疲れへんわ」
「え? ああ、まぁな……。確かに俺はアイツと仕事で一緒に居るけど、疲れることはあんまりねぇな」
部屋に戻った雄介と望はソファに腰を下ろし、ゆったりとした時間を過ごすのだった。
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