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ー信頼ー83

「ホンマ、アイツって、そこが凄いわぁ。 そんで、真面目なところは真面目で、遊ぶところは遊ぶって感じなんだもんな」 「ん? まぁな……」  望は雄介にそう答えると、今度は裕実の方へ顔を向け、 「あのさ、裕実はその……和也と一緒にいるつもりなのか?」  その望の突拍子もない質問に、二人は目を丸くした。  だってそうだろう。 明らかに望もこの場の空気とは全く違うことを言ってしまっているのだから。 本当にそういうところでは、望は話し下手なのだろう。 「俺たちの方は、昨日の夜に話して、ずっと一緒にいることになったんだけどな。 ほら、本当にそういうことを聞かずに、この島に来ちまっただろ? だから、なんていうのか、俺たちの親子の勝手な夢みたいなのに付き合わせた感じになっちまったじゃないか……だからさ、今更だけど、本当にそれでいいのかな? って思ってよ。 ほら、やっぱり、女性と結婚して幸せな家庭を築くみたいな夢があるんだったら、俺たちの夢に付き合わせてごめん、って感じかな?」 「大丈夫ですよ! 僕は特に和也と一緒にいたいと思っていますから。 ただ、和也的にどう思っているか、っていうのは分からないですけどね」 「うん……まぁ、今は裕実のことを聞きたかったからいいんだけどさ。 和也のことは後で聞いてみるよ。 しかし、よく考えてみたら、この島での生活って、俺たち家族のためにお前たちを巻き込んだ形になっちまったんだよな。 確かに、ここに来る前に和也とかには聞いたけど、将来のことを全く考えてなかったっていうのか……。 もし、どちらかが喧嘩して別れることになったら、診療所の方も成り立たなくなるだろうし、今だって本当にギリギリの人数でやってるって感じなんだしな」 「確かに、そこまで考えてなかったわぁ。 せやけど、ここまで来たら、頑張るしかないやろー! それに、望の親父さんがわざわざ俺たちのためにこの診療所を作ってくれたんやで、それこそ、途中で諦めたら面目が立たんわぁ。 それに、俺は望の親父さんにはホンマに頭上がらんしなぁ。 医学部の学費も出してもらった訳やし」 「そうですよ! 雄介さんの言う通りです! 例えば、僕たちが別れてしまったとしても、この診療所はやっていかないといけないんだと思いますからね。 望さんのお父様は望さんのために、この診療所を作ってくださったんだと思いますしね。 だから、心配しないでくださいね。 僕たちはこのまま望さんに付いていきますからっ!」

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