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ー信頼ー86

 そんなことを話していると、望と裕実がお風呂から上がってきたようだ。 「二人で何を話してたんだ? 何か和也が項垂れているように見えるんだけど……」 「そうですよねぇ。 確かにいつも元気な和也が元気が無いように見えるんですけど、まさか!? 和也と雄介さんが喧嘩してしまったとか!?」  裕実はそこまで言っておいて、『言ってはいけないことを言ってしまった』とでも思ったのか、思わず自分の口を塞いでしまっていた。 「違うわぁ。 なんかなぁ、さっき和也の奴、オカンと電話してたやんか。 そんで、次回の定期便で和也のオカンがこの島に来るって言っておって、そこから和也が落ち込んでまったみたいなんやわぁ」 「そうだったんですか? って、お母様が来るのっていいことだと思えるんですが……。 まぁ、僕の場合にはもう二度と会いたくないですけどね」 「ん、まぁ……裕実の場合にはしゃーないわなぁ。 あん頃っていうのは、DVって言葉が無かった時代やったし、それで問題になることなんか無かった時代やったしな。 しかし、なんでやろうなぁ? 和也の場合には普通の家庭環境で育ってきたんやろ? ま、でも……確かに望も俺も親にはめんどくさいと思うところあんねんから、まぁ、そういうことなんやろな」 「まぁ、そういうこと……。 確かに親は母親しかいなかったけど、普通の環境だったと思うぜ。 だけど、なんつーのかな? 母親だけだったから、母親は父親の代わりをしなきゃなんなかったんだろうし、すっげぇ、躾の面では怖かった印象だったんだよなー。 だから、いつまでも結婚もしないでフラついている俺のこと、心配してんだろうなーって思ったんだよ。 やっぱりさぁ、普通に男同士と付き合っているなんて事、親には言えない訳だろ? まぁ、ほら、望のところは親が認めてくれているようなもんだからいいけどさ。 俺の親はそこのところ分かってもらえないかもしれねぇからな」 「でも、さっきの電話でそのことを言われた訳じゃないんやろ?」 「確かに、言われてもねぇけど、話題にもなんなかったから話さなかったっていうのかな? だから、まだ確かにそこは分からない所なんだけどな。 やっぱ、普通に考えて男同士で付き合ってること。 認めてもらえるもんなのかな? っていうところだな」 「じゃあ、もし、僕達のことを和也のお母様に認めてもらうことができなかったら? 和也はここを辞めなければならないことになるんじゃないんでしょうか?」

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