2034 / 2073
ー信頼ー88
「そうだな。俺がちゃんとしないと、裕実のことを守っていくなんて言えなくなっちまうところだったぜ。」
「そういうことやんな……」
「ならさぁ、こういうのはどうだ? 裕実って元から女っぽい見た目してんだろ? だから、お袋には裕実のことを彼女として紹介すんのはどうだ? それなら文句ないだろうしさ。」
「ああー! なるほどなぁ。俺は和也の意見に賛成やねんけど……裕実の方はどうなん?」
「でも、それって、和也のお母様を騙すってことになりますよね?」
「ん、まぁ……そういうことになるわなぁ。」
「そこは、あんまり乗り気はしませんが、和也のためっていうんだったら頑張りますよ。ただ、ふっとした拍子にバレたときっていうのが怖いですよねー?」
「まぁ、そこはバレないように気を付けたらええんと違う? ただ裕実は素でいればええねんだろうしなぁ。声だって特に変える必要なんか無さそうだしな。裕実くらいの声の高さやったら、女の人でも声が低い人っておるんやから、そこは問題ないように思えるんやけどな。ただ、体の方はさすがにどうにもできんから、見られたときやんなぁ? 和也のオカンって看護師やったっていうんやから、そういうことに関しては詳しそうな感じがするんやけど?」
「あ……そこまで考えてなかったなぁ。んー、多分、体まで見られちまった場合にはバレちまう可能性はあるよなぁ。後は裕実のことを男だと疑って心理の方も突いてきたときにはヤバいのかもな。そういうところ、俺にだって分かるんだから、お袋だったらすぐにバレちまうのかもなぁ。」
「せやけど、和也のオカンはただ単に和也に会いに来たいっていうだけなんやろ? 後は宿に泊まるみたいやしー。まぁ、そこはさ、もし聞かれたときに答えればいいってことなんやし、もし何も聞いてこなかったら、別に無理に言う必要っていうのはないんと違うの?」
「まぁ、今んところはハーフアンドハーフってところかな?」
「まぁ、そういうこっちゃな。それに和也がもしオカンに裕実のことを紹介することになっても、名前が『裕実』って女っぽい名前だしなぁ。男でも女でも、どちらにせよ違和感のない名前だしなぁ。」
「それを言ったら、『望』もなんじゃねぇ?」
今まで暗い表情を浮かべていた和也だったが、冗談を言えるまでに回復したようだ。一方で、今度不機嫌になっているのは望の方だった。そう、腕を組んであっちの方を向いてしまっているのだから。
ともだちにシェアしよう!