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ー信頼ー90

「まぁ、確かに、そうだよな」 「さて、俺たちもそろそろ寝ようか? いつ何が起こるか分からへんし、睡眠っていうのは取れる時に取っておいた方がええしな」  雄介はそこで一旦体を伸ばすと、その場に立ち上がり、和也同様に望の手首を取る。そして、二階にある自分たちの部屋へと向かうのだった。  その間、望は珍しく幸せそうな笑みを浮かべていた。  以前の雄介は、ここまで積極的ではなかった気がする。前の雄介なら、立ち上がった直後に望の手首を取るようなことはせず、先に行ってしまうことが多かったからだ。それが今では、自然と望に触れるようになっている。  この変化は、和也たちと一緒に住むようになった影響なのか、それとも雄介自身が人間として成長したからなのか――望にはそれが分からなかったが、手首を取られる感覚は悪くなかった。  そして翌朝。  雄介はいつものように目覚まし時計より早く起き、朝ご飯を作るため階下へと向かった。しかし、台所から漂ってくるいい匂いに気付く。  明らかに誰かが自分より先に起きて朝食を作っている。  リビングへと通じる引き戸を開けると、料理をしている人物が雄介に気付いたらしく、 「よっ! 雄介! おはよう!」  いつもの笑顔で和也が挨拶をしてきた。 「あ、ああ……おはようさん。お前たち、今日は起きるの早いなぁ」 「ま、ああ、まぁな……。雄介が起きる時間より早く起きておかないと、朝食作れなくなっちまうと思ったからな」 「別に、朝食まで作らんでも大丈夫やのに……」 「気にすんなって。今日はただ早く起きちまったってだけだからさ。ま、とりあえず、雄介は座って待っててくれねぇか」 「あ、ぅん……おう……」  しかし、じっとしていられない性格の雄介は、どうしても落ち着かない様子だ。それに気付いたのか、思い出したのか、和也が口を開いた。 「大人しくしてられないんだったら、望とイチャイチャしてきたらどうだ?」 「……へ?」  いきなりの提案に、驚きの裏声を上げる雄介。  しかし、その意見に少し考え込みながら、雄介はぼそりと答える。 「んー……あんま望のこと起こしたくないしなぁ。朝の望って、むっちゃ機嫌悪いしな」

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