2036 / 2073
ー信頼ー90
「まぁ、確かに、そうだよな」
「さて、俺たちもそろそろ寝ようか? いつ何が起こるか分からへんし、睡眠っていうのは取れる時に取っておいた方がええしな」
雄介はそこで一旦体を伸ばすと、その場に立ち上がり、和也同様に望の手首を取る。そして、二階にある自分たちの部屋へと向かうのだった。
その間、望は珍しく幸せそうな笑みを浮かべていた。
以前の雄介は、ここまで積極的ではなかった気がする。前の雄介なら、立ち上がった直後に望の手首を取るようなことはせず、先に行ってしまうことが多かったからだ。それが今では、自然と望に触れるようになっている。
この変化は、和也たちと一緒に住むようになった影響なのか、それとも雄介自身が人間として成長したからなのか――望にはそれが分からなかったが、手首を取られる感覚は悪くなかった。
そして翌朝。
雄介はいつものように目覚まし時計より早く起き、朝ご飯を作るため階下へと向かった。しかし、台所から漂ってくるいい匂いに気付く。
明らかに誰かが自分より先に起きて朝食を作っている。
リビングへと通じる引き戸を開けると、料理をしている人物が雄介に気付いたらしく、
「よっ! 雄介! おはよう!」
いつもの笑顔で和也が挨拶をしてきた。
「あ、ああ……おはようさん。お前たち、今日は起きるの早いなぁ」
「ま、ああ、まぁな……。雄介が起きる時間より早く起きておかないと、朝食作れなくなっちまうと思ったからな」
「別に、朝食まで作らんでも大丈夫やのに……」
「気にすんなって。今日はただ早く起きちまったってだけだからさ。ま、とりあえず、雄介は座って待っててくれねぇか」
「あ、ぅん……おう……」
しかし、じっとしていられない性格の雄介は、どうしても落ち着かない様子だ。それに気付いたのか、思い出したのか、和也が口を開いた。
「大人しくしてられないんだったら、望とイチャイチャしてきたらどうだ?」
「……へ?」
いきなりの提案に、驚きの裏声を上げる雄介。
しかし、その意見に少し考え込みながら、雄介はぼそりと答える。
「んー……あんま望のこと起こしたくないしなぁ。朝の望って、むっちゃ機嫌悪いしな」
ともだちにシェアしよう!