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ー信頼ー99

 和也は携帯を取り出すと、親へと電話を掛けてみるのだが、受話器から聞こえてくるのは母親の声ではなく、留守番サービスに接続するアナウンスの声だった。 「やっぱ、掛からないってことは船は出てるってことになるのかなぁ?」 「そういうことなのかもしれへんな」  とその時、島中にサイレンの音が鳴り響くのだ。望たちがこの島に来てから初めて聞くサイレンの音かもしれない。だからこそ、その音に反応してしまい、思わずビクッとなったのだろう。そして、流れてくる放送に耳を傾ける。 『只今、この島に台風が近付いて来ております。本日はその台風の接近により外は大変危険になりますので、外出はお控え下さいますようお願い申し上げます』 「成る程なぁ。そういうふうに放送が流れてくるってことなんやねぇ」 「みたいだな。今までそんなことなかったからさ、ビックリしたけどな。放送を流すことで注意を促してくれるってことだな」 「つーことは、今日の午後からの診察っていうのは休診状態になるのかもしれへんよなぁ?」 「そうだな。今の放送で外出は控えるようにって言ってたしな。つーか、もしかしたら、避難指示が出るのかもしれねぇぜ。小さい頃さぁ、俺が住んでる地域で台風があったんだけど、それで市民が学校の体育館とか公民館とかに集まったことがあったからさ」 「それにこの診療所は海に近いやろ? まぁ、確かに避難指示っていうのはあるのかもしれへんなぁ」  そんな中、裕実は台風情報を見ていたのか、 「確かに、台風はこの島の辺りに着実に近付いてきてるみたいですね。このままだと確実に避難指示は出ると思いますよ」 「やっぱ、そういうことになんねんなぁ。ほなら、念のため避難指示が出るまでに色々と用意しといた方がいいのかもしれへんな。避難用の袋もやけど、食料とかももう少し入れておいた方がいいのかもしれへんなぁ。ほんでもって、俺たちは医者なんやから、医療器具も持ってた方がええみたいやしな」 「とりあえずさ、避難所っていうのは、やっぱ高台にある小学校の体育館みたいだな」 「うん、分かった。一応、診療所の方を開けながら午後はそうした方がええみたいやな」

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