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ー信頼ー102

「うん……まぁ、望さんの意見も分かりますけど、今、僕たちが雄介さんを信じないでどうするんですか!? 雄介さんは望さんの忠告を振り切って助けに行ったんですから、もう、信じて待つしかありませんよ」 「……まぁ、そうだよな」  その時、海岸の方から誰かが砂浜を上がって来る姿が見えた。  その人物は息を切らせながら、全身ずぶ濡れでこちらに歩いてくる。 「に、兄さん……! 今、雄介さんが……」 「……!? 朔望!? どうしてお前がここに!?」  望は驚きつつも急いで彼に駆け寄る。 「とりあえず父さんたちと一緒に診療所を手伝いに来たんだけど、船が台風の風に煽られて転覆しちゃって……とりあえず泳げそうな人たちだけがこうして陸に向かって来たって訳だよ」  朔望が説明していると、その後ろからもう一人の姿が現れた。 「歩夢もいたのか?」 「あ! 兄さん! 久しぶり! それと僕も医者になったんだよ」  歩夢はにっこりと笑顔を浮かべ、まるで今にもピースサインを出しそうな雰囲気で言った。 「あ、ああ……そうだったんだな。それより、怪我人は!?」 「流石は兄さんってところだね。僕たちのことはどうでもいいんだ? ま、それはいいとして……僕たちは転覆したことを伝えに泳いで来たんだよ。船には父さんたちが残ってるから、向こうのことは任せてる。それで、僕たちは島に怪我人が運ばれてきた時に備えて待機してるってわけ」 「そうだったのか……船には父さんが残っているんだな」  望は少し安堵の表情を浮かべた。 「それで、雄兄さんはどうして船の方に向かったの?」 「あ、ああ……雄介は昔、レスキューで働いてたことがあったんだ。それで、医者よりもレスキューの経験を優先して、救助に向かっちまったんだよ」 「そうなんだ……。ちなみに雄介さんのお父さんもあの船に乗ってたけどね」 「……え? そうだったのか!? 雄介のお父さんもあの船に!? あと、和也のお母さんも乗ってたって……」 「それで、和也さんは?」 「あ、和也は今、地元の人たちに船を出してもらえるよう掛け合ってる最中だ」 「それはいいんだけどさ、この荒波の中で船を出してくれる地元の人がいるかどうかだよねぇ」 「……え?」 「だから、こんな台風の中で船を出すのって、ある意味、命を捨てに行くようなもんだろ? 海の男なら誰でもそう思うんじゃないかな」 「じゃあ、なんで定期便はこんな日に海に出たんだ?」

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