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ー信頼ー103
「まだ、本土にいる時っていうのは、全然波が穏やかだったし、空は晴れてたんだよ。それに台風は夜に接近予定だったから船は出したみたいなんだよね。だけど、この島の付近まで来たら急に風が強くなってきて、それで、あとちょっとの所で波に煽られて転覆しちゃったって訳……」
「そうだったのか……。そういや、和也が遅いような気がするんだけどな」
「やっぱ、船出してもらえなかったんじゃない? それで、和也さんは一生懸命説得しているのかもしれないよ」
「それなら、僕も和也と一緒に説得してきます!」
「和也が説得してもダメなら、裕実さんが行っても……って思うんだけど?」
「それでも、和也の側にいてあげた方が和也は頑張れると思いますから!」
そう言うと、裕実は和也が行った方向に走り出していった。
「とりあえず、俺達は雄介達のことをここで待ってるしかねぇのかぁ」
「そうみたいだね。とりあえず、診療所の方に設備とかってあるの?」
「ああ、一応な……。何かあった時のために手術室はあるんだけど、あんま大きな診療所じゃねぇから、そんなに沢山の人を一気に治療するって事は出来ねぇぜ」
「とりあえず、僕達がここで待機しているから、兄さんは怪我人がもし来た時のために手術室の準備してきてよ」
「心配はいらねぇよ。一応は準備してきてるからさ。とりあえず、今、どれだけの人達が怪我をしているのかっていうのが分かればいいんだけど……その状況によっては診療所で治療するより、学校の体育館で治療した方がいいと思うしな」
「とりあえず、船に乗っていた人達っていうのは、かなりいるよ。これが平日だったら、もしかしたら荷物だけの定期便だったのかもしれないんだけどね。でも、今は夏休みらしいから子供達が多かったのかなぁ? どうやら、親達はお盆まで休みが取れなくて、一足先に島にいるお婆ちゃんやお爺ちゃんの家に遊びに行くって子が多かったみたいだからね」
「……って、その情報を知ってるって事は、お前は子供と話してた? って事なのか?」
「うん、まぁね……。前に言った事あるでしょう? 僕は子供が好きなんだって……。だから、ついつい子供がいると声掛けちゃうんだよね」
「そうだったのか……。それなら多分、お前の情報によると子供の方が多いなら、お前が治療してあげた方がいいのかもな」
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