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ー信頼ー106
そんな話をしていると、和也が何故か望たちの所へやって来た。
「とりあえず、一度に多く運ぼうと思って、車を使ってみた。避難所である体育館に行って、毛布を借りてきたよ」
「ああ、なるほどな。だから車で来たんだな」
「そういうこと。毛布をたくさん持ってきた。それと、さっき蒼空のお母さんに会って、島の人たちに服を譲ってもらえないか頼んでおいたよ。船に乗ってきた人たちは、この事故で服が足りなくなってるだろうからな。それとタオルもね」
「へぇ、さすが和也だね。相変わらず気が利くっていうのかな?」
「まぁな。先のことを考えたら、今のうちに準備しておかないと。とりあえず、蒼空のお母さんとは小学校の体育館で待ち合わせしてる。今来た人たちを連れて、望と車で救助者を運ぶよ」
「そうだな。それが良さそうだ。朔望と裕実と歩夢は、ここで陸に上がってくる人たちの様子を見ていてくれ。もし急変があったら、裕実が電話をくれたら俺が戻る」
「分かりました!」
そう決まると、和也は望と数人の救助者を車に乗せ、小学校へ向かった。途中、望は診療所で降り、自分の車に乗り換えて再び裕実たちのいる場所へ戻り、和也を追って小学校を目指した。
この作業を何度も繰り返し、陸に上がってきた人たちを順次小学校へ送り届けていった。
数回の往復を経て、望たちが裕実たちの元に戻ってきた頃には、空一面に雨雲が広がり、ポツポツと雨が降り始めていた。その間にも、漁師たちの協力を得て救助船から次々と人々が降りてくる。
「もう降ってきちまったのかよ……」
「そうだな。あと、どれくらいの人が残ってるんだ?」
「うーん……まだ半分くらいはいると思うよ。とりあえず、僕がここで人数を数えてたからね」
「やっぱり、この時期だから予想以上に乗ってたんだな」
「後は……雄介たちか……」
いまだに戻ってこない雄介の姿。
雄介が海に入ってから、もう数時間が経過していた。
「やっぱり、海保の船はもう間に合わないのかもね。雨も降ってきたし、日没も近いしさ……」
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