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ー信頼ー108
そう言って、和也の母親は和也のことを抱き締めるのだ。
「……って、俺はもう子供じゃねぇんだから、人前で、そんな事するなって! 恥ずかしいだろうがぁ」
「いいじゃない。私からしてみたら、貴方はまだまだ子供なんだからね」
「……そういう意味じゃねぇって」
そう和也は小さな声で突っ込みを入れる。
「とりあえずさぁ。みんな、ここの島の上の方にある小学校の体育館に行ってもらってるから、そこに行ってよ。俺と望はここで雄介たちのこと待ってるからさ」
「そうなの? 分かったわよ……」
やっとのことで母親から解放された和也は、そこで何故だか胸を撫で下ろすのだ。
「和也、お袋さんのこと、学校まで案内しなくて大丈夫なのか?」
「大丈夫だろ? それよりか、望は雄介のことを一人で待ってられるのか? この分だと、雄介がいつここに帰って来るのかっていうのは分からないんだぞ」
「まぁ、確かに、そうなんだけどさ」
「それに、そろそろ俺たちも避難しておかないとじゃねぇのか? 雨足が強くなってきたみたいだからな」
「でも……」
「確かに雄介のことが心配なのは分かるけど、雄介が帰って来る前にお前が倒れたり、怪我とかしたら洒落になんないだろ?」
「まぁ、そうなんだけどな。でもさ、雄介たちのほうが心配っていうのか……。だって、この嵐の中、捜索活動してんだろ?」
「雄介たちなら大丈夫だって! だって、捜索のプロなんだろ? そうだ! プータロウじゃなくてプロなんだからな!」
「んー、ま、確かにそうなんだけどさ。もう、それは何年も前の話なんだろ?」
そういう話をしていると、和也の見慣れた青いスポーツカーが望たちのいる場所へと近づいてきた。
「あれ? 朔望、どうしたんだ?」
「ん? とりあえず、和也に車を返しに来たんだけどー。まぁ、それと、流石にそろそろ僕たちも避難しないとヤバいんじゃないのかなぁ? って思ってね。だから、兄さんたちを連れに来たっていうのもあるのかな? 寧ろ、そっちのほうが優先でね」
「だよなー。朔望もそう思うよな? 俺からももう望に何回も言ってるんだけどさぁ、やっぱ、雄介のことが心配だからって、望がここからなかなか動こうとしないんだよな」
「そんな事だろうと思ったから、ある意味迎えに来たっていうのもあるかなぁ? 和也では兄さんのことを説得することが出来なかったみたいだね」
「今のところはな」
「とりあえず、言葉で動いてくれないって時には、強行手段しかないよねぇ」
「……へ? 強行手段って?」
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