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ー信頼ー110

「和也さん……そうやって首を振ってるけどさぁ。聞かないと分からないことだってあるでしょう? 和也さんの場合、兄さんのことを怒らせたり傷つけたりしたくないから、ちゃんと詳しく聞こうとしないんだと思うんだけど……。さっきの兄さんの言い方だと、言いたいことはあるけど言いたくない、または言えないっていうところかな? それを心の中で溜め込んでおいたら、自分の思いを相手に伝えられないし、ストレスの原因にもなるんじゃないのかな? それに、本当は言いたいからこそ言葉を止めちゃったんだと思うしね」 「だけど、お前の場合には、そういうことをストレートに聞きすぎなんだよっ! 今、望が言いたいことっていうのは、望が言葉にしなくても俺にはちゃんと分かってる。だから、望に色々聞きたい時っていうのは、遠回しに聞くのがベストなんだよ。お前は、まだ望と会ってそんなに経ってないし、望の性格を知らないから、そういうこと普通に聞けるんだと思うぜ」 「そこは、本当の兄弟なんだから、もうちょっと僕に心を開いてほしいかなぁ? って思うところなんだけどな。まぁ、和也さんの場合には友達または親友っていう関係だから、そんなに喧嘩したくないっていうのがあるんじゃない? それで、頭の中で変なストッパーみたいなのがかかっちゃうのかな? 友達以上親友未満っていう関係だから、いつでも縁は簡単に切れるしね。だから兄さんに遠慮しなきゃっていう心理が働いて、強く言えないんだと思うよ。でも、僕と兄さんの関係っていうのは兄弟だから、一生切っても切れない関係なんだよね。だから喧嘩しても問題ないってわけ……」  その朔望の言葉に、和也はため息を漏らした。 「なんか、お前ってすげぇのな。流石の俺も降参……俺の負けだわぁ……」 「……って、言葉に勝ったも負けたもないでしょ」 「え? あ、まぁ、そうなんだけどよ……」 「……って、まだ和也さんの方が何か言いたそうなんだけど?」 「んー、でも、まぁ、いいや……また同じことの繰り返しになっちまうしな」 「まぁ、ある意味、僕も和也さんには負けたけどね。完全に話すり替えられちゃったし。とりあえず、小学校に着いたから、兄さんのこと連れて体育館の方に行こっ! 今日はここでみんなと一緒に過ごさなきゃなんないんだしね。話はそこででもできるでしょ」  朔望は車から降りると、さっき同様に望の脇を和也と抱え、体育館内へと向かった。

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