2071 / 2073

ー信頼ー125

 望と雄介が二人暮らしをして食事をしている時、場を和ませてくれたのはいつも雄介だった。雄介の話す内容はなぜか面白く、時には腹を抱えて笑うこともあった。  雄介が告白してきてから、もう何年が経っただろうか。二人の出会いは、雄介が怪我をして望の働く病院に運ばれてきた時だった。望が主治医となり、そこで雄介が一目惚れし、告白してきたのが関係の始まりだった。  最初は、雄介に女医と間違えられたことで望は良い印象を持っていなかった。しかし、その後、ICUを出た翌日に病室で体を動かしていた雄介を望が制止し、その話を聞いた時、心に何かを感じたのかもしれない。  いつの間にかお互いに惹かれ合い、恋人同士となり、さまざまな困難を乗り越えながらここまで来た。互いに助け合い、今もこうして一緒にいられる。 「とりあえず、ごちそうさまー!」  和也がそう言った直後、ヘリコプターの音が島に響いた。和也はその羽音に耳を傾ける。 「ヘリコプター?また来たのか?」  そう独りごち、窓の外を眺める。 「またマスコミのヘリなのかなぁ?でも、赤色のヘリなんだよなぁ」  和也の何気ない一言を聞き、望はふと昔、雄介と話したことを思い出した。そして、和也の言葉に反応するように窓の外へ目を向け、青く澄んだ空を見上げる。  青空に映える赤いヘリコプター――そうだ、雄介が話していたことがあった。 『赤いヘリコプターだったら、消防庁のヘリなんだけどな……』  その赤いヘリコプターは、かつて雄介が働いていた消防庁のものだ。  その機体が小学校の校庭に降りたのを確認した瞬間、望は気付けば走り出していた。  昼食を取っている場合ではなくなってしまったのだ。  しかし、消防庁のヘリコプターがここに降り立った理由は全くわからない。今回の事故は火事が原因ではなく、管轄は海上保安庁のはずだ。それなのに、なぜ消防庁のヘリがここに来たのか。  理由はわからない。それでも望の体は本能のように動いていた。  望の中に根拠も保証も何もなかったが、あのヘリに雄介が乗っている気がして、家を飛び出していたのだ。  望は全速力で小学校の校庭を目指した。  こんなスピードで走るのは一体いつ以来だろう。診療所から小学校へ続く登り坂を、これまでにない速さで駆け上がる。  普段運動していない体はすぐに息が上がり、額からは汗が噴き出していた。しかし、望は足を止めることなく無我夢中で坂を上っていく。

ともだちにシェアしよう!