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ー信頼ー126
望が小学校の校門にたどり着いた頃には、額から滝のように汗が流れ、肩で大きく呼吸を繰り返していた。普段運動をしていない体は酸素が足りず、足は痙攣を起こしていた。それでも望は必死に乱れた呼吸を整え、腕で汗を拭いながら顔を上げる。
そして目の前に見えたのは――望が思った通りの人物だった。初めて出会った時と同じ消防庁の制服姿で、そこに立っていた。
「……へ? あ、ゆ、雄介……?」
息切れしながらも、望は愛しい恋人の名前を呼ぶ。
その声が届いたのか、雄介は太陽のような笑顔を浮かべて望の元へ駆け寄ってきた。
「今から行こうと思っておったのに……。って、どないして俺がここにおるって分かったん?」
息を切らしながら望は答える。
「だからさ……あの……家から赤いヘリコプターが見えて……昔、話したことあっただろ? 赤いヘリコプターって消防庁のやつだって……それで、なんか、直感的に雄介が乗ってる気がして、ここまで来てみたんだよ」
「あー、確かにそんな話したなぁ……『赤いヘリコプターは消防庁のやつ』って」
雄介は一旦言葉を切り、望を見つめながら昨日の出来事を語り始める。
「昨日、俺は望の静止を振り切って海に行ったやろ? 親父と二人で要救助者を探して、順調に救助してたんやけどな……。最後の船が出た後、沈没船の中を確認しとったんや。せやけど、気づいたら台風のせいで海が荒れて、俺と親父は流されてもうたんや。体力が限界で、死にそうになりながらも望のことを考えとったんやけど、気づいたら意識を失っとったらしい。次に目が覚めた時、空は真っ青で、砂浜に横たわっとった。周りには何もなさすぎて、ここが天国か? って思ったんやけど、隣に親父も生きとってな。二人で歩き始めたら村みたいな場所にたどり着いたんや。そこで電話借りて、親父が消防庁に連絡を入れてな。ヘリで迎えに来てくれたんや。服の方は、救助中は下着一枚やったし、ヘリに積んであった制服を借りたから、この姿になってもうたんや」
「そうだったのか……」
望は息を整えながら、雄介の話をじっと聞いていた。雄介の無事を目の当たりにし、安堵と感動で胸がいっぱいになっていた。
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