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囚愛Ⅳ《雅side》1

最後にエリックに会えた。 それだけでもう俺は満足だ。 ―…それなのに 「雅様…本当に宜しいのですか?」 「しつこいよ。いいよ。最後にエリックに会えた。俺といると、エリックは辛いだけだから」 テリーがしつこい。 俺の決心を鈍らせてくる。 「お互い好きなのに?」 「俺を忘れて、アルベルトと一緒になるほうがエリックにとってはいいんだ」 そうだよ、好きだから離れるんだよ。 俺が傍にいるとエリックは父さんとのことを思い出すんだから。 エリックには幸せになって欲しいんだ。 「あー!もう!バカなのかお前らは!!」 深夜なのでほぼ人もいない、がらんとした空港のロビーにテリーの日本語が響き渡る。 驚いて振り返る人もいる。  その一人が俺だった。 テリーは構わず続けた。 「いいか!?三科雅彦が死んだのはエリックのせいでも雅様のせいでもない!ギャングのせいだ!そんなのに囚われて自分のせいにして、なに二人して被害者ぶってんだよ!!」 今までテリーがこんなに声を張り上げたことあっただろうか。 いや、無い。 無いからこそ本気で言ってくれてると伝わる。 「それだったら、ソフィア様が生きていてよかった…三科雅彦が死んでもしかしたらソフィア様は俺を好きになってくれるかもしれないと思ってる俺は何なんだ!?最低なやつだろ!?」 単純に、エリックが生きているだけでいい。 そう思えたらとても楽なのに。 俺のせいで幸せになろうとしていない彼に、ただ幸せになって欲しいだけなのに。 「エリックがお前を忘れられると思ってるのかよ!離れることがエリックの幸せ?エリックの幸せは、お前が幸せになることだろ!お前はエリックがいなくても幸せなのかよ!」 「テリー…」 やめて。 やめてよ。 俺の脳内を乱さないで。 「アルと幸せに!?結局エリックが幸せを受け入れるなら、その相手はお前しかいないだろ!あーもう!二人が一緒にいればそれだけで解決なんだよ!」 こんな俺が、こんな弱い俺がエリックの傍にいて本当にエリックは幸せになれるのかな。 「すみません。二人がもどかしくて」 「テリー…」 「《もうテリーってば、そんなに大声張り上げたら警察呼ばれるよ?》」 俺の肩を抱きしめながらテリーに注意をしてきた人物がいた。 「《アル…》」  「《ねぇ雅、エリックは今ひとりで泣いていると思う。僕は彼を愛してるからほっとけない。その涙は僕じゃなくて君にしか止められないんだけど、協力してくれないかな?》」 頭の中がぐちゃぐちゃになる。 俺はエリックから離れたいのに。 離れたくなくて、本当は一緒に幸せになりたくて。 いつまたフラッシュバックが起こるか分からないのに。 弱い俺を見られたくないのに。 「《なんなんだよ…二人して…俺は…俺は…》」 俺の目からは涙が溢れていた。 エリックを守るためには強くないといけないのに。 俺が支えないといけないのに。 「《俺は―…弱くて…こんな俺…》」 「《雅、エリックは君に守られたいなんて思っていないはずだよ。弱くてもいい》」 弱くてもいいのかな? 失望されないかな? 甘えてもいいのかな… 「《俺なんかがエリックを幸せに出来るのかな…》」 ―…一緒にいたい 「《君が隣にいるだけでエリックは幸せだよ。さぁ行こう雅》」 アルベルトに肩を抱かれながら車へと向かう。 深夜2時。 全員無言で、街中のネオンを見ながら移動した。 テリーがスペアキーで玄関を開ける。 一歩踏み出すのを躊躇している俺の背中をポンッと叩いてアルが言った。 「《さぁ、勇気を出して。愛する人の涙を止めて、君の涙も止めてもらうんだ》」 そしてその背中に追いた手をグッと押され、俺は勇気を出して歩き始めた。 二人が見守る中、俺は自分が使ってた部屋へと向かった。 ドアは開いたままで、エリックが座り込んで泣いている姿が見える。 俺は泣いて震えている愛しい人の背中を後ろから抱きしめた。

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