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囚愛Ⅳ《雅side》3

俺はダンサーMiYaViとして振り付けやダンスの依頼を受け、エリックは変わらず執事学校の講師として働いている。 充実した毎日を過ごしていたがアメリカに来て3ヶ月後、事件が起きた。 【ダンサーMiYaViは三科雅彦とソフィア・フローレスの息子】 という記事がニュースになった。 母さんの妊娠時期~出産時期、 俺の本名がフローレス・雅でフローレスという名前が母さんの芸名と同じこと、 俺の顔が父さんに似ていること、 瞳も母さんと同じアンバー色、 エリックが父さんの執事で今は俺の傍にいること、 それらが瞬く間に世間に広まっていった。 「母さん、ごめん…大丈夫?」 『ええ、大丈夫よ。いつかこうなると思っていたわ。しばらくテリーと色んな国を転々とするわね』 「うん、何かあったらいつでも連絡して」 母さんは欧州で人気のモデルだったけど、父さんが亡くなってからは電撃引退し、消息不明で騒がれていた。 コルビナに見つかりたくないと言っていた母さんは、今回の記事で俺が学生時代日本にいたこともすぐにバレてしまうだろうから、テリーと身を眩ますそうだ。 「エリック、執事学校は?今日平日だよね?」 「しばらく休暇を取りました。雅と一緒にいる時間を増やしたかったので」 嬉しいこと言ってくれるじゃないかエリック。 確かに俺、最近遠征でヨーロッパ行ったり、アジア行ったり続いてたからなぁ。 久しぶりに2人の時間を楽しもう。 そう思った翌日、アルベルトがうちにやってきた。 「《はーい、雅》」 「《アル、どうしたの?》」 「《もしかして…エリックが謹慎処分になって仕事休んでるの知らないの?》」  「《は?―…なにそれ》」 謹慎処分―…? エリックは今日だけ執事学校に行くと言って出ていったが、それは謹慎処分の説明を聞くためだとアルベルトが教えてくれた。 「《雅さぁ、エリックが何て言われてるか知ってる?資産狙い。三科雅彦を守れなかったくせに。職務放棄した執事。41歳が20歳年下となど犯罪だ》」 エリックは自分の母親の葬儀に出るために父さんとスイスに同行しなかったんだ。 でもマスコミはそれをバカンスとして、職務放棄をしたと報道していた。 学校の生徒たちもそれを信じる者がいて、中にはボイコットする生徒も出てきた。 だからとりあえず、騒動が落ち着くまでは謹慎処分にしたそうだ。 「《やっぱりエリックに相応しいのは僕じゃないかな?諦めてくれていいんだよ雅。僕は今でもエリックを愛しているから君の本気が知りたい。それだけだ》」 酷い。 ありえない。 エリックは何も悪くないのに。 「ねぇエリック知らなかったよ。謹慎中って」 「アルが言ったんですか?余計なことを―…雅のせいではありません。気にしないで。ちょうど薬学の勉強もしたかったので良い機会です」 エリックはそう言って、怒っている俺に優しくキスをした。 俺はこの笑顔を守りたい。 守るためにはどうすべきか数日考えた。 記事もどんどん出任せが増えていく。 ―…決めた 「エリック。今日はバスタブにグリーンブルームバスソルト入れておいたよ。ゆっくり湯船に浸かっておいで。俺もツルツルでしょ」 「ありがとうございます」 「バスタイム終わったら俺の部屋にきて」 「雅の部屋に?寝室ではなく?」 「うん、俺の部屋。渡したいものがあるからさ」 不思議がるエリックにそう言って、俺は自分の部屋に移動した。

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