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囚愛Ⅳ《雅side》4
エリックがいつもよりバスタイムを楽しんでいる間、俺はライブ配信をすることにした。
世界大会のあとから俺のフォロワーは急激に伸び、父さんと母さんの息子だという情報が流れてからは700万人越え。
父さんが生前から残しているSNSアカウントのフォロワーは1億越え、母さんのアカウントは削除されてしまったけど引退まで5000万人フォロワーがいたから俺なんかまだまだなんだけど…
事前にL.A時間の21時に【Live streaming to tell the truth(真相についてライブ配信)】という告知をしておいた。
机にスマホをセットし、予定の時間に配信開始するとすでに30万人が待機していた。
《皆が気になる真相についてお話しようと思います》
《俺の父は三科雅彦で、母はソフィア・フローレスこれは事実です》
《俺の本名はフローレス・雅・三科。母さんのフローレスは芸名だから、そこから名前をもらっている》
《記事にもあるように、父さんの執事をしていたエリックと今は一緒になっている》
《俺は…目の前で父さんを射殺されて、そのトラウマで声が出なくなったり、過呼吸になったり、不安になったりを繰り返して…》
《そんな俺をエリックはずっと支えてくれて、声の出せない俺にダンスをしたらと提案してくれて、ダンスの楽しさを知れたのはエリックのおかげなんだ》
《俺は10歳の頃にエリックを愛していると気付いて、好き好きってアピールをしてたんだけど、想いは通じなくて》
《彼は俺が18の時に何も言わずに執事を辞めて姿を消して、探しても探しても見つからなくて、3年かけてようやく再会できて―…今、一緒にいる》
《資産狙いとか、父さんを守れなかった無能な執事だと言われて悔しい》
《誘惑されたわけじゃない、俺がエリック無しじゃいられなくなっただけ。だから彼を傷付けるのは許さない》
《彼は現在、誹謗中傷のせいで自宅謹慎になり、仕事に行っていない。おかしくないかな?エリックは何も悪いことしていない》
《父さんが射殺されたときも、遊んでいたわけじゃない。エリックは自分の親の葬儀中だったんだ。職務放棄なんかじゃない》
《だからエリックを傷付ける人を俺は許さない》
「雅、お待たせしました」
「《あぁ、エリック座って》」
配信をしている途中で、バスルームから上がってきたエリックが部屋に入ってきた。
俺に指示されて隣に座ると、配信しているスマホに気付いた。
「ん?…撮影ですか?」
「《今の気持ちを動画に残しておこうと思って》」
「なぜ英語なんですか?」
エリックはSNS関係かなり疎いから、これが配信されているって気付いていなかった。
だから誤魔化して、ありのままの俺たちをそのまま配信し続けることにした。
「《いいから。エリックの想いを教えてよ。英語で》」
「《なぜ英語…》」
不思議そうに英語で返してくれた。
「《今回の騒動で色々あったけどエリックは今、俺から離れたい?》」
俺がそう問いかけると、エリックは少し黙った。
「《離れたくはありませんが、それも選択肢のひとつなのかなと思います。まだ結婚もしていませんし。私は何を言われてもいい。でもあなたの人間性やダンスを否定されるのは物凄く嫌です》」
そう、今回の騒動ではエリックだけでなく俺を批判する声も多数あった。
20歳も年上と、しかも同性なんてどうかしている。
三科雅彦の血筋を汚す。
そんなやつのダンスや考えた振り付けなんて見たくない、など。
「《離れたら気持ちは変わる?俺を愛さなくなる?》」
「《いいえ、離れても愛しています》」
もうさ、俺たちを引き離すものなんて無いんだよ。
だって俺たちの決心は何よりも深くて固いって確め合ったんだから。
そう思って俺はテーブルの下に隠しておいた、101本の白い薔薇の花束をエリックに差し出した。
「《それなら、さ…俺と結婚しようエリック》」
それを受け取り、驚いた表情を見せるエリック。
「《こんなことされたら、もっとずっと一緒にいたくなってしまいます…》」
「《ねぇみんな、俺たちを祝福してくれる?》」
そう言って俺が配信画面を見ると、画面をまじまじと見たエリックが真実に気付いた。
「《―…LIVE?200万人…ライブ配信しているのですか!?止めてください》」
「《愛してるよエリック。結婚しよう。これからは君を傷つけるのは誰であろうと夫の俺が許さない》」
俺は、本気でエリックと一緒になりたいということを全世界にアピールするために公開プロポーズをした。
過去に俺が思い描いていたプロポーズとは違ったけど。
「《こんな生配信をして…断わったら私は悪魔か何かと言われそうですね》」
「《そう。だから俺の天使になってよ。俺と結婚してくれる?》」
「《本当に私でよろしいのですか?》」
俺が大きく頷いてキスをすると、エリックの目からは涙が溢れていた。
「《ずっと考えていました。私と雅は20も離れている。あなたはまだ若い。これから素敵な出会いがあるかもしれない。私なんかに時間を使うのは勿体ない。私に費やした時間が惜しかったと、そうなる前に離れるべきなのかと…》」
あぁ、こんなにお互いを想っている二人を誰が止められるのか。
年の差なんて、性別なんて関係ない。
「《そう考えていたのに、あなたにそれを肯定されて離れることになってしまったらと思うとその方が苦しくて…言えなくて…》」
「《エリック以外いらないよ。愛してる》」
「《後悔するかもしれない。必ず私の方が先に死にます…だからその時は他…んっ》」
エリックが「その時は他の誰かと幸せになって」と言おうとしていると気付き、俺はそれを言わせないためにキスをした。
「《じゃあエリックのこれからの人生全てに俺が存在するんだね》」
「《私より先に死んだら許しません。その時は離婚です》」
「《そっちこそ覚悟はいい?もう二度と離さない。誰に何を言われても》」
「《私もです。愛しています雅》」
そして花束をテーブルに置いてキスをした。
俺たちの愛のように深いキスを。
「《待って雅…キスなんか200万人に配信したくない》」
まだ配信されていることに気付いたエリックが、キスを止めてスマホを指差す。
俺は画面を覗きこんで、精一杯の笑顔で言った。
「《もう500万人が見てるよ。じゃあね、みんな。ここからは俺とエリックの時間だから。今後、俺の奥さんを傷つけることは許さないよ》」
そう言って配信を止めて、再び深いキスを続けた。
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