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第37話 秋月と戯れ⑫※

 好き放題に幻乃を乱していった指先が、ずるりと一気に抜けていく。指の代わりに、ひたりと何かを当てられる感触があった。溺れた人間のように荒く息を吐きながら、おそるおそる目を開ける。  次の瞬間、視界に映った怒張の大きさに、幻乃は矜持のすべてを捨てて、直澄に泣きついた。   「いや……、む、むりです、入りません」    震える声を情けないと自嘲する気も起きなかった。湯殿でも見たことはあったが、完全に天を向いた状態の直澄のそれは、体格に見合った大きさどころではない。控えめに言っても今の幻乃には、一種の凶器にしか見えなかった。 「気弱なことを言うな、幻乃。……興奮するから」  今まで聞いたこともないほど甘ったるく柔らかい声で直澄が囁く。その声を聞いた瞬間、恥も外聞もなく、幻乃は素早く身を起こし、這いつくばって逃げにかかった。けれど悲しいかな、今の今まで快楽に溺れさせられていた幻乃の体は力が抜けきっていて、肩ひとつ掴まれただけで、容易に引きずり戻されてしまう。 「あ、の……直澄、さん、まって」 「もう十分待ったろう」 「また今度にしましょう。ね? 俺も、口でしますから」 「俺は今、お前が欲しい。幻乃」 「体! 体、まだ、痺れてるでしょう? だから――」 「もうとっくに治っている」     懇切丁寧に解された後孔に、熱く猛ったものが当てられる。引きつる笑顔を必死で浮かべた幻乃が舌を回せたのも一瞬のこと。   「むり……っ、むりです、って……ぇ――ああぁァ!」  ぎちり、と無理矢理に肉を押し広げるような音がした。少なくとも幻乃がそう錯覚するほどの、圧迫感と衝撃だった。誰も触れたことのなかった尻のあわいを割開かれて、圧倒的な物量に押し入られて、体を作り変えられていくような恐怖と言ったら、初めて戦場に立ったときよりも、よほど恐ろしくてたまらない。 「あ、いや……! 苦し……っ、むり、抜いて、抜いて、くださ……っ」 「大丈夫。もう半分、入った」 「まだ半分なんですか⁉︎ 嘘――ひ、んっ、大きく、しないで、ください……っ」 「していない」 「だって、うごいて……!」 「っ、く……! お前が煽るようなことばかり、言うからだろうが。締めるな……っ」  足を立てているのさえ難しくて、直澄が腰を進めるたびに、どんどんと幻乃は上半身から布団に倒れ込んでいく。直澄がその凶悪なものをすべて幻乃の中へとおさめるころには、幻乃はほとんど尻だけを掲げて突っ伏すような体勢になっていた。直澄のひと回り大きな体格で背中から抱き込まれた今、身動きすらろくにできない。  押し広げた後孔に自らを馴染ませるように、直澄はじっと動きを止めていた。二人分の荒く湿った息の音が、寝室の中に秘めやかに広がる。   「ぅ、う――」    気持ちいいのか悪いのかすら、よく分からない。ただ強烈な圧迫感だけがあった。

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