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第43話 疑心暗鬼

「なあ、みなとー?お茶でいいー?」 憂太の声が聞こえるのに、部屋中の空気が抜かれているのかと思うくらい息ができない。 「(……彼女いた事あったんだ…)」 ずっと嘘をついていたんだ、騙されていたんだと思うと、怒りなのか悲しみなのか分からないグチャグチャした感情に飲み込まれる。 「(何で黙ってたんだよ。デート中のあの姿は全部嘘だったのかよ)」 この関係が始まった頃は、とんでもない提案をしてしまったと思ったことを覚えている。 でも、恋人ごっこを続けているうちに憂太のことが好きになっていた。 それに、憂太の初めてできた特別な存在は俺だと思っていた。 けど、違っていたらしい。 初めてなんかじゃなかった。 「みなとー?テーブルの上あけてー、食べ物運ぶよ」 憂太の声が聞こえる。 「なぁ、憂太、これ何?お前さ、彼女いたんじゃん。なんでずっと黙ってたの?嘘ついて、俺の反応見て面白がってた訳?」 言葉を考えるよりも先に憂太を問い詰めていた。 「え…なに、その手紙…」 「は?お前宛ての手紙だろ。ゆう君へって書いてんじゃん。しかも、丁寧に付き合ってた時の事まで謝ってるしさ」 さっきまで楽しそうにしていた憂太の顔がどんどん青ざめていき、手が震えている。 「湊!ちがうんだ、その…騙すつもりじゃなかったんだ。本当に…」 こんなに泣きそうな顔をした憂太は初めて見た。

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