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第45話 憂太の過去(1)
「彼女というか…ほんの少しの間、付き合った人はいた」
聞きたくない言葉だった。
「そ…っか…」
弱々しい声が出る。
「でも、恋人がいたって胸を張って言えるものなのか、わかんなくて…」
「ひっく…どーゆうこと?」
「えっと…話、長くなるかもしれないんだけど…」
話しづらいのか、憂太は眉間に皺を寄せていた。
「いい。聞きたい」
俺をぬいぐるみのように抱いている憂太はボソボソと話し始める。
憂太は姉2人からの服装や髪型のアドバイスのおかげか、昔から異性に一目惚れされる機会が多くあったことを話した。
「(ちゃんとすればモテそうと思ってたけど、モテていたとは…)」
一般的には羨ましい状態だが、憂太へ向けられた好意は本人を苦しめるものだったらしい。
男友達の好きな子が憂太のことを好きになると交友関係にヒビが入り、女の子からの告白を断ると「思わせぶりなやつ」と言われていたようだ。
「あの…僕が前に話した、友達の話…って、覚えてる?」
「…うん、覚えてる」
夏休み前に憂太が涙を浮かべながら話していたから記憶に残っている。
「あれ、友達の話じゃなくて、僕の話なんだよね」
「へ…?」
鼻水を啜りながら聞き返す。
「高2の終わりから卒業するまでの話…」
「ゆうたの話?」
なんとなく嫌な予感がした。
「高校3年になる前にね、同じクラスの女の子から彼氏の相談をされるようになってさ。麻生さんって言うんだけど」
「うん…」
麻生…アルバムから出てきた手紙も同じ名前だった。
「3年生になってからも彼氏の相談にずっと乗ってて…僕なりに考えてアドバイスしたりしてたんだけど…毎回うまく悩みが解決したら良いなぁって」
何度も誰かの悩みを聞いて、毎回ちゃんと一緒に悩んであげていたんだろうなって思った。
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