「…ってた」 憂太の返事が聞き取れなかった。 「憂太との恋人ごっこを終わらせたくなくて、ずっと黙ってた。ほんとにごめ…」 「知ってたよ、湊」 憂太の返事は俺の言葉に被って聞こえてきた。 「え？知って…え？」 「湊に彼女ができたことないの、知ってた」 「えぇ？」 予想していた反応と全然違う。 憂太に告白すると決めてから、打ち明けた時には罵声を浴びせられたり、呆れられたりするだろうと何度も何度も脳内でシミュレーションしていたのに。 「嘘って、このことだった？」 「そ、そう…」 「なーんだ、そんなことかぁ」 「え？え、何で…知ってたの？」 さっきまで泣いていたとは思えないくらい、カラッとした返事をする憂太に理解が追いつかない。 今の俺は、ポカンという音が聞こえそうなくらい、とてつもなく間抜けな顔をしているだろう。 「あはは。だって、湊、いっつも彼氏の振る舞いはーとか言うくせに、いつも僕のことをさすがだなーって褒めてんだもん」 「へ？それだけ？」 「ううん、それに、僕が何かする度にすっごいドギマギして照れるし、可愛いかったから、慣れてないいんだろうなって」 普段の行動で墓穴を掘っていたらしい。 「い、いつからそう思ってたんだよ！」 「…最初にキスした時…から」 最初の時点でバレていたなんて思いもしなかった。 この1年近くずっと泳がされていたらしい。 「あと、湊の高校時代の人と偶然、大学で会ったときに知った。ふふ」 「んぐぐ…それは…」 ずるいと言いかけたが、さっきまで真っ青になって泣いていた憂太の顔に笑顔が戻っていたからやめた。