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第58話 別の世界

憂太がイメージチェンジをしてから数日経った。 今までみんな見向きもしなかったくせに、「前から髪切ったら絶対かっこよくなると思ってた」だの「元々、身長高いし、良いなと思ってた」だの手のひらを返したように噂している。 「(それなら元から仲良くしてたら良かったじゃん。なに、今さら)」 聞こえてくる憂太の噂はすべて良いものばかりなのに、素直に喜べずにモヤっとする。 それに、外見の変化があってから、憂太の性格がこれまでよりも少し明るくなった。 きっと、これが本来の憂太の姿なのだろう。 これまでみたいに俯きながら学内を歩いていたり、研究室でポツンと座っていたりすることがなくなった。 「(はあ。俺、心狭いんかな…)」 正直、憂太の成長というのか、変化は嬉しい。 憂太が過去を乗り越えるきっかけになれたことは誇らしく思っている。 それなのに、たった数日の間に憂太が別の世界の人のように思えて遠い。 なんだか、ずっと応援していたアイドルが有名になって、手の届かないところへ行ってしまったような感じだ。 「(俺、ほんとに恋人でいいんだよな…)」 LINEもしているし、これまでと何も変わっていないはずなのに、心の中に自分でもよくわからない何かがずっと居座っている。 「ねえねえ、憂太くん、土曜日の夜予定ある?」 研究室に入ろうとドアノブに手をかけた瞬間、部屋の中から同じ研究室の女の子と話す声が聞こえてきた。

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