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第8話
身体は売っても心まで売らない。理屈ではそう思えても、未知の行為に身体は怯えてすくむばかりだ。
長い指がゆっくりと、粘膜を擦るようにして押し入ってくる。
「っひ……、う、ああっ」
指が進むにつれ志乃の身体はずり上がろうとするが、背後からしっかりと腰を抱え込まれてどうにもならない。
「う、うっ……」
やがて根元まで穿たれた指は執拗に内側を抉ってから、ゆるゆると引き抜かれ、何度もそれを繰り返される。
「い、痛い、痛い……やめて、怖い……」
すすり泣くような声で訴えても、秋成は止めてくれない。それどころか、指が二本に増やされて、志乃はきつく奥歯を噛んで必死に耐える。
志乃の苦しい息遣いと、濡れたいやらしい音が混じって静かな部屋に響く。
「……もっと、力を抜いて。でないと、裂けますよ」
「っあ、や……やだ、ああ」
裂けると言われ、恐ろしさに更に身体が萎縮してしまう。
「そろそろ、大丈夫そうですね……」
熱に浮かされたように、秋成が言った。と同時に指が引き抜かれ、もっとずっと大きく硬く、熱いものが志乃の粘膜に触れる。
「秋成、秋成、やめて……頼むから」
これからされることへの恐ろしさに、歯がかちかちと鳴った。
最後の気力を振り絞って、懸命に言う。
「こんなこと、許さない。一生、憎んで絶対に……仕返ししてやる。でも、……でも、もしも今、やめてくれたら」
そうしたら許すから、と一縷の望みを託して懇願したが、秋成の動きは止まらなかった。
「復讐は甘んじて受けますよ。ただし、あなたがここを生きて出られたら……ですが」
体内に入ろうとする圧迫感はさらに強くなり、志乃は絶望感に打ちひしがれる。
嘘だ、嘘だ。こんなこと、あるわけがない。まるで悪夢を見ているようだ。
なんとか逃げようと賢明に身を捩る志乃の瞳が、大きく見開かれる。
「っああ───……っ!」
悲痛な叫びは、途中で秋成の手で塞がれた。秋成は容赦なく、竦みあがった身体を深々と貫いていく。
「───っ、んぅ、うう……っ」
あまりの辛さに、志乃の頬にぽろぽろと涙が転げ落ちた。
「志乃……、志乃様……っ」
呻くような秋成の声がかすかに聞こえた気がしたが、焼けるような痛みと息苦しさに、すぐに志乃の視界は暗くなり、闇に包まれたのだった。
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